ゆずの時期は年に二度、青ゆずは7月から黄ゆずは10月から
「ゆずはいつの果物ですか」と聞かれると、答える人によって返ってくる月が違います。夏だと言う人もいれば、冬だと言う人もいる。売り場の担当者に聞けば「12月がいちばん動く」と言われ、産地の農家に聞けば「7月にはもう採りはじめている」と言われます。どれも間違っていません。
ずれが起きるのは、ゆずが1年に2回、まったく別の姿で採られるからです。緑のまま採る青ゆずと、色づいてから採る黄ゆず。しかも黄ゆずは、貯蔵に回すか搾るかで採る日が半月から1か月ずれます。さらに採ったあとの貯蔵が効くので、店頭に並ぶ期間は収穫の期間より長くなります。「収穫時期」「旬」「出回り時期」を同じ言葉で語ると、どうしても話が合わなくなります。
このページでは、農林水産省の特産果樹生産動態等調査、山口県と徳島県が公開している栽培指針、JA高知県とJA全農とくしまの出荷情報、地理的表示(GI)の登録内容をもとに、ゆずの一年を月単位で並べ直します。青ゆずと黄ゆずの採り時、用途ごとに変わる収穫の目安、産地と品種によるずれ、採ったあとどこまで持つのかまでを順に見ていきます。国産の果物を乾かして粉にする仕事をしている立場から、旬を外した時期に香りを使う段取りも最後に添えました。
ゆずは一年のどこで店頭に並ぶのか
先に一年の流れを通しで見ておくと、あとの話が早くなります。ゆずは春に花が咲き、夏に緑の実が採れ、晩秋から冬にかけて黄色い実が採られ、貯蔵されたものが春先まで残ります。1本の木が、季節ごとに別の顔で売り場に出てくると考えると分かりやすくなります。
5月に花が咲き、7月には最初の実が採られる
山口県が公開している香酸かんきつの栽培指針では、ゆずの生育の節目が旬単位で書かれています。5月上旬に根が伸びはじめ、5月中旬が開花期。同じ時期に生理落果がはじまり、6月下旬に落果が終わります。摘果はそのあと、葉果比100を目標に行います。葉100枚に対して実1個という密度です。
そして7月上旬、最初の採収がはじまります。この指針には「この時期から貯蔵果採収まで順次行う」と書かれていて、秋の終わりまでに何度も園地に入ることが前提になっています。JA高知県は露地の青玉出荷を7〜10月、徳島県は8月に青玉を出荷としているので、この時期に採られるのは緑のままの実です。夏の青ゆずと冬の黄ゆずは、別の木から採れるわけではありません。同じ園地から、時期をずらして採られていきます。
月ごとに、どのゆずがどこから出てくるか
産地の出荷情報と県の栽培指針を月に割り付けると、次のようになります。年や産地によって前後するので、幅のある目安として見てください。
| Month | 出回るもの | どこから出るか | この時期の使い道 |
|---|---|---|---|
| January | 黄ゆず (貯蔵もの) | 四国の 予冷貯蔵品 | 鍋の薬味、 果汁、ゆず茶 |
| February | 黄ゆず (長期貯蔵) | 予措を強めに かけた貯蔵果 | 果汁、 マーマレード |
| March | 貯蔵ものが 細っていく | 残った 貯蔵在庫 | 加工品が中心 |
| April | ハウスの青ゆず が出はじめる | 高知の ハウス | 早い時期の 香りづけ |
| May | 花が咲く (実は出ない) | 産地各地 | 花を 香りづけに |
| June | ハウスの青ゆず | 高知・徳島の ハウス | 青ゆずの 絞り汁 |
| July | 露地の青ゆずが 採れはじめる | 高知・山口 ほか | 香りづけ、 早採り果汁 |
| August | 青ゆずの いちばん多い時期 | 高知・徳島 | ゆずこしょう |
| September | 青ゆずの後半 | 四国・九州 | ゆずこしょう、 青ゆず果汁 |
| October | 着色がはじまり 貯蔵用を採り込む | 高知・愛媛 ・徳島 | 青果の出荷が はじまる |
| November | 搾汁用の採り込み 青果も本格化 | 全国の産地 | 果汁、ポン酢、 ゆず茶 |
| December | 黄ゆずの山 冬至前が最大 | 全国の産地 | ゆず湯、鍋、 ゆず茶 |
このカレンダーで押さえてほしいのは、ゆずが手に入らない月がほとんどないことです。生果として店頭に出やすいのは10月から12月に偏りますが、貯蔵ものとハウスものが前後を埋めるので、実物のゆずが完全に途切れるのは5月前後の短い期間だけになります。
青ゆずが春から出てくる年もある
JA高知県は、青玉(青ゆず)の出荷をハウス栽培中心で4〜9月、露地栽培で7〜10月としています。ハウスと露地で出はじめが3か月ずれる計算です。JA全農とくしまも、露地とハウスを組み合わせて年間を通して出荷しており、4〜6月ごろのハウス栽培で青ゆずを出す場合があると書いています。
「青ゆずは夏のもの」という言い方は露地を前提にした話で、業務用の流通まで含めると春から手に入ります。逆に言えば、8月に店頭で青ゆずを見かけなかったからといって、その年の青ゆずが終わったわけではありません。露地の青ゆずは9月、産地によっては10月まで続きます。
12月に山がくるのは冬至があるから
黄ゆずの需要は冬至に向かって一気に立ち上がります。国立天文台の暦要項によれば、2026年の冬至は12月22日です。2025年も2027年も同じ12月22日で、売り場の準備はその2週間ほど前から動きはじめます。
JA高知県も、黄玉の出荷を「12月の冬至前を中心に」と表現しています。産地側が冬至を基準に出荷を組んでいるということです。ゆず湯に使う実、鍋の薬味に使う実、贈答用の箱詰め。用途の違うものが同じ2週間に集中するので、この時期は玉のサイズや傷の有無で値段の幅が大きくなります。
年が明けてからも黄ゆずは買える
冬至を過ぎると売り場の面積は急に減りますが、ゆずそのものが無くなるわけではありません。JA高知県は黄玉の出荷時期を「12月の冬至前を中心に4月頃まで」としています。1月から4月に出てくるのは、秋のうちに採って貯蔵庫に入れておいたものです。
年明けに出てくるものは、採ってから予措をかけ、温度を下げながら数か月抱えてきた実です。裏を返せば、冬至を外した時期でもゆずが手に入る前提で商品を組めるということでもあります。
「収穫時期」と「旬」と「出回り時期」はどこが違うのか
検索して出てくる月がばらばらなのは、3つの違う話が同じ言葉で書かれているからです。ここを分けておくと、産地の資料を読んでも混乱しなくなります。
収穫時期は、畑から採る日のこと
収穫時期は、木から実を切り取る日です。露地の青ゆずなら7月から、黄ゆずなら10月中旬から11月中旬。ここは栽培暦で決まっていて、天候で前後はしても、大きくは動きません。庭にゆずの木がある人が知りたいのはこの時期です。
出回り時期は、貯蔵のぶんだけ後ろに伸びる
出回り時期は、店頭や取引先に並ぶ期間です。収穫が11月に終わっても、貯蔵庫に入れたぶんは翌年の4月まで出ていきます。山口県の栽培指針では、貯蔵果の採収を10月中旬に置いたうえで、予措(採ったあとに水分を少し飛ばす作業)の程度を「長期貯蔵果(2月以降出荷)5〜6%、早期出荷用(1月末まで)は2〜3%」と使い分けています。出荷する月を決めてから採り方を変えている、ということです。
出荷の8割は加工向けで、生果で並ぶのは一部
ここが、ゆずが他の柑橘と決定的に違うところです。令和5年産の特産果樹生産動態等調査によれば、ゆずの全国の収穫量は28,143.5トン、出荷量は26,734.8トンで、そのうち加工向けが21,519.9トンあります。出荷量の80.5%が、果汁や加工原料として工場へ向かっている計算になります。
同じ調査で、うんしゅうみかんを除くかんきつ類全体の加工向け出荷量は44,583.8トンです。ゆず1品目でその48%を占めます。「ゆずの季節」を生果の売り場だけで考えると、実態の2割しか見ていないことになります。
| Growing region | 収穫量 (トン) | 出荷量に占める 加工向けの割合 | Main growing region (市町村) |
|---|---|---|---|
| Nationwide | 28,143 | 80.5% | — |
| Kochi Prefecture | 15,005 | 79.7% | 安芸市、北川村、 香美市 |
| Ehime Prefecture | 4,473 | 94.6% | 鬼北町、西予市、 松野町 |
| Tokushima Prefecture | 2,721 | 62.4% | 那賀町、上勝町、 つるぎ町 |
| Yamaguchi Prefecture | 377 | 53.9% | 萩市、下関市、 Yamaguchi city |
| Saitama Prefecture | 217 | 46.4% | 毛呂山町、 ときがわ町、越生町 |
| Kyoto Prefecture | 140 | 10.2% | 京都市、京田辺市、 京丹波町 |
産地ごとに数字がこれだけ振れるのは、産地の作りが違うからです。愛媛県は出荷の95%近くが加工向けで、事実上ほとんどが搾汁と加工に回ります。一方で京都府は加工向けが10%ほどしかなく、生果として売る産地です。同じ「ゆずの産地」でも、店頭で見かけるかどうかはまったく違います。
「旬」は、何に使うかを決めてから言う言葉になる
ゆずこしょうを作りたい人にとっての旬は8月です。ゆず湯に入りたい人にとっては12月、果汁を搾って一年分を仕込みたい人にとっては11月上旬から中旬。同じ果物に対して、用途ごとに別の旬があります。
だから「ゆずの旬は11月から12月」という説明も、「青ゆずの旬は8月」という説明も、どちらも正しいまま並びます。自分が何をしたいのかを先に決めれば、見るべき月は一つに絞れます。
青ゆずはいつからいつまで採れるのか
青ゆずは、黄色くなる前の未熟な実です。当社で加工を受けるときの感触で言うと、色づく前の皮は締まっていて刻みやすく、黄ゆずとは香りの立ち方が違います。ゆずこしょうや薬味のように皮を使う用途で青ゆずが選ばれるのは、このためです。
露地の採りはじめは7月上旬
山口県の栽培暦では、7月上旬を緑果の採収開始に置いています。同じころに夏芽が伸びはじめ、無降雨日数15〜20日を目安にかん水を入れる時期でもあります。JA高知県は露地の青玉出荷を7〜10月としており、徳島県の栽培管理では8月に青玉を出荷すると書かれています。産地によって1か月ほどの幅があります。
ハウスものは4月から出る
JA高知県によれば、青玉はハウス栽培を中心に4〜9月に出荷されます。春のうちから青ゆずが必要な料理店や、通年で香りを使いたい加工の現場は、この枠を当てにしています。ただし量は露地ほど多くないので、まとまった数を確保するなら早めに動く必要があります。
青ゆずを採ることが、翌年の実りを守る
ゆずは隔年結果が出やすい果樹です。山口県の栽培指針は「かんきつの中で、ゆずは隔年結果が最も大きいグループである」としたうえで、着花や着果が多い木には摘蕾と早期摘果を励行するよう書いています。青玉を採ることは、この早期摘果を兼ねています。
徳島県の栽培管理も、7月上旬を摘果の目安として「80葉に1果を標準として、樹勢に応じて調整してください」としています。夏に青ゆずを採るのは、香りの需要に応えるためだけではなく、木の負担を先に減らして翌年の花を確保するためでもあります。
色が回りはじめたら、青ゆずの期間は終わり
山口県の栽培暦は、10月上旬を着色開始としています。JA高知県の露地の青玉出荷も10月まで。黄色みが差しはじめた実は「青ゆず」として売られなくなるので、売り場から緑のゆずが消えるのはこの転換点です。
青ゆずをまとめて確保したいなら、着色が始まる前に発注を終えておく必要があります。10月に入ってから探しはじめると、すでに産地は黄ゆずの段取りに移っています。
黄ゆずは、使い道によって採る日が変わる
ここが、他の解説ではあまり書かれていないところです。黄ゆずの収穫時期を「10月下旬から12月」と1本の幅で書いてしまうと、産地が実際にやっていることが見えなくなります。同じ黄ゆずでも、貯蔵に回すものと搾るものでは、採る日が半月ほどずれます。
貯蔵に回すものは10月中旬、3〜4分着色で採る
山口県の栽培暦は10月中旬に「貯蔵果採収」を置き、「3〜4分着色果を採収(丁寧に取り扱う)。長期貯蔵には小〜中玉が適する」と書いています。まだ3割から4割しか色が回っていない段階で、見た目には青みが残っています。
玉の大きさまで指定されているところが、この記述の要点です。同じ日に採った実でも、長期貯蔵に向く玉とそうでない玉が分けられます。年明け以降に出てくるゆずが冬至前のものより小ぶりに見えることがあるのは、この選り分けの結果という読み方ができます。
搾汁に回すものは11月上旬から中旬、7〜8分着色で採る
同じ栽培暦の11月上旬から中旬に「ゆず搾汁用果実採収」があり、「7〜8分着色果を採収すると搾汁率が高く、果汁の透明度が高い」と書かれています。搾る量が増え、濁りが少なくなる時期ということです。
同じ指針の別の項には、着果過多の木について「搾汁用の果実は着色が7〜8分の頃、早期に採収すると、樹の負担も早く軽減でき、搾汁率が高く、果汁が澄んでいる」とあります。果汁の品質と木の管理が同じ判断でつながっています。
徳島県は3〜7分着色までに収穫を終える
徳島県の農業支援センターが出しているゆずの栽培管理では、収穫を10月から11月にかけて行い、「3〜7分着色までに収穫を終了します」としています。完全に黄色くなるまで木に置かない、という考え方です。
家庭で育てている人が「まだ緑が残っているから」と待っているうちに採り時を過ぎてしまうのは、このためです。産地の基準では、全体が鮮やかな黄色になった時点ではもう遅い場面があります。
木の側についても同じことが言えます。山口県の指針は「着果過多は隔年結果や黄変落葉を誘発する」として、実を長く付けたままにしないよう求めています。
採る日の判断を、着色の割合という数字に落としているのが産地のやり方です。カレンダーの日付ではなく、実の色を見て決める。庭の木でも、この見方はそのまま使えます。
| 採る時期 | 実の状態 | 向く使い道 | 採り方の目安 |
|---|---|---|---|
| 7月〜 September | 緑のまま | ゆずこしょう、 薬味、香りづけ | 摘果を 兼ねて採る |
| October 中旬 | 3〜4分着色 | 貯蔵して 年明け以降に出す | 小〜中玉が Suited |
| November 上〜中旬 | 7〜8分着色 | 搾汁 | 搾汁率が高く 果汁が澄む |
| 10〜 November | 3〜7分着色 までに終了 | 青果出荷 | 徳島県の 栽培管理の目安 |
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産地によって、時期はどれだけずれるのか
ゆずは令和5年産の調査で37の都道府県に栽培記録があります。北は岩手県の陸前高田市から、南は鹿児島県の曽於市まで。当然、採り時も出回り方も同じではありません。
| Growing region | 青ゆずの時期 | 黄ゆずの時期 | 確認できた出どころ |
|---|---|---|---|
| Kochi Prefecture | ハウス4〜9月 露地7〜10月 | 12月の冬至前を 中心に4月頃まで | JA高知県の 出荷情報 |
| Tokushima Prefecture | 8月に青玉を Shipping | 10〜11月に収穫 11月から冬至ゆず | 徳島県、 JA全農とくしま |
| Yamaguchi Prefecture | 7月上旬から 順次 | 10月中旬に貯蔵用 11月上〜中旬に搾汁用 | 山口県の 栽培指針 |
| Kochi Prefecture 香美市 | — | 10月以降に 鮮黄色の果実 | 物部ゆずの GI登録内容 |
高知県だけで全国の半分を超える
令和5年産の高知県の収穫量は15,004.5トンで、全国28,143.5トンの53.3%にあたります。栽培面積は894.8ヘクタール。主な産地として安芸市、北川村、香美市が挙がっています。高知県、愛媛県、徳島県の3県で全国の78.9%を占めるので、「ゆずは四国」という印象は数字の裏付けがあります。
高知県の出荷は加工向けが79.7%。JA高知県は、果汁を搾った「柚子酢(ゆのす)」をはじめとする加工品が数多く作られていると書いています。生果として全国の店頭に出てくるのは、この残りの部分です。
徳島県の木頭ゆずは、皮の厚さで選ばれてきた
徳島県那賀郡那賀町の「木頭ゆず」は、2017年9月15日に地理的表示(GI)に登録されています。登録内容によれば、果皮が厚く果皮障害の発生が少ないこと、外観が美しいことが特性で、那賀町で半世紀にわたる系統選抜によって確立されました。青果用は直径4センチ以上で、バラ傷や刺し傷がないものを選んで出荷します。
那賀町は標高1,000メートルを超える山に囲まれた土地で、昼夜の寒暖差が大きい環境が品質につながっているとされています。JA全農とくしまは、11月ごろから「冬至ゆず」として販売すると書いています。徳島県の加工向け比率は62.4%で、四国3県のなかでは生果に回る割合が高いほうです。
愛媛県はほぼ全量が加工に回る
愛媛県の収穫量は4,472.7トンで全国2位ですが、出荷量に占める加工向けの割合は94.6%に達します。主な産地は鬼北町、西予市、松野町。鬼北町は「ゆずの里」と呼ばれてきた土地で、町は激しい寒暖差が香りの強いゆずを育てると説明しています。
全国2位の産地でありながら、その県のゆずを生果で見かける機会は多くありません。「どこの産地か」と「店頭で買えるか」は別の話だということが、この数字にはっきり出ています。
生果に特化した産地もある
高知県香美市の「物部ゆず」は2020年6月29日にGIに登録されています。登録内容には、青果用に特化したゆずで、栽培管理により外観のキズが少なく出荷後の日持ちが良いこと、青果向け出荷率が全国平均18%に対して69%(2017年)と高いことが書かれています。収穫と出荷は、果実が黄色くなる10月以降です。
収穫後は予冷庫で貯蔵し、出荷時に高知県園芸連の「ゆず出荷規格」に準じて2回の選別を行うとされています。京都府も加工向けが10.2%と低く、生果中心の産地です。京都市、京田辺市、京丹波町が主な産地として挙がっています。
東日本にもゆずの産地はある
同じ調査には、埼玉県(217.4トン、毛呂山町・ときがわ町・越生町)、山梨県(84.0トン、富士川町・身延町・上野原市)、栃木県(39.5トン、宇都宮市・茂木町・足利市)、岩手県(12.9トン、陸前高田市・大船渡市)が載っています。量は四国に比べれば小さいものの、産地として記録されています。
ここで紹介している栽培暦は山口県と徳島県のもので、いずれも西日本の産地向けに書かれています。東日本の寒い土地で同じ日付がそのまま当てはまるかどうかを示した公的資料は見つかりませんでした。地域のJAや農業改良普及センターが出している目安があれば、そちらを優先してください。
品種や系統で、収穫期はどれくらい変わるのか
ゆずには在来から選抜されてきた系統がいくつもあります。山口県の栽培指針には、香酸かんきつの品種特性表として来歴と収穫期が並んでいます。そこから読み取れる範囲で見ていきます。
木頭系は大玉で皮が厚い
山口県の品種特性表によると、徳島県那賀郡木頭村(現在の那賀町)で選抜された「木頭2号」は果実が100〜140グラムの大果系で、種子が30個以上と多く、皮も厚いとされています。有刺で樹勢が強く、隔年結果性があるため摘果の励行が必要とも書かれています。
同じ表では「木頭6,7号」について、果実は大玉で揃い、果面が平滑で美しいとあります。収穫期はいずれも10月下旬から12月上旬、緑果は8〜9月です。
種のない系統は、多田錦と無核ゆず
「多田錦」は、徳島県神山町の多田謙一氏が昭和32年に山口県阿武郡阿東町から譲り受けた無核ゆずの果実を播き、その実生個体から選抜したものです。昭和52年9月に名称登録されています。果実の平均は80グラムで、100〜120グラムの大果も混じります。果形は偏平で、虎斑症も少ないとされています。
トゲが徒長枝や長大枝にしか出ないこと、隔年結果が少ないこと、7年生で結果が安定することが特性として挙がっています。常温貯蔵で1月下旬まで持つとも書かれており、収穫期は10月下旬から12月上旬です。家庭で育てる場合、トゲの少なさと種の無さは扱いやすさに直結します。
同じ表にある「無核ゆず」は、明治35年ごろ島根県から導入され、山口県阿武郡徳佐(現在の山口市)で育成されたものです。果実は40〜50グラム、果形は偏球形で、大きさはスダチ程度と書かれています。収穫期は10月下旬から12月上旬、緑果は8〜9月です。
花ゆずや獅子柚子は、統計の上では別扱いされていない
売り場や園芸店では「花ゆず」「一才ゆず」「獅子柚子」「鬼柚子」といった名前を見かけます。ただし令和5年産の特産果樹生産動態等調査を見ると、かんきつ類の果樹として96の品目が並ぶなかに、カボス、スダチ、ダイダイ、ユコウ、ジャバラなどは独立した品目として載っている一方、花ゆずや獅子柚子は独立して計上されていません。
つまり、国の統計でいう「ユズ」の28,143.5トンに、これらがどう含まれているのかは調査票の上では見分けられません。小さい花ゆずを「ゆず」として扱うか別物として扱うかは、売り手によって判断が分かれます。買う側としては、名前だけで大きさや香りを決めつけず、実物のサイズを確認したほうが確実です。
品種特性表を並べて分かるのは、多田錦も無核ゆずも川上系も木頭系も、収穫期がそろって10月下旬から12月上旬、緑果が8〜9月だということです。系統の違いは主に果実の大きさ、種の有無、トゲ、病害への強さに出ます。
採り時を知りたいだけなら、品種を特定するより、実の着色と使い道を見て決めるほうが早いことになります。ゆずの種類と使い方もあわせて読むと、皮と果汁の使い分けの見当がつきます。
庭のゆずを、いつ・どう採るか
ここまでは産地の話でしたが、実際に「ゆずの収穫時期」を調べる人の多くは、庭や畑に木がある人です。産地の基準をそのまま使える部分と、読み替えが要る部分を分けておきます。
ゆずの木には鋭いトゲがあります。山口県の品種特性表でも、木頭系は「刺も長く大きい」「刺は中位の大きさで数は多い」と記されています。多田錦のようにトゲが徒長枝や長大枝に限られる系統もありますが、有刺が前提と考えたほうが安全です。
厚手の手袋と長袖を用意し、脚立を使うなら平らで安定した場所に据えます。高い枝の実を無理に引き寄せると、トゲが顔に近づきます。届かない実は高枝ばさみに切り替えたほうが早く終わります。
果梗を残して切ると、日持ちが変わる
実をもぎ取るのではなく、清潔なはさみで果梗(実と枝をつなぐ軸)を切ります。ヘタの少し上で切り、軸を数ミリ残すと切り口が小さくなります。ここが裂けると、そこから傷みが入ります。
山口県の栽培暦が貯蔵果の採収に「丁寧に取り扱う」とわざわざ書いているのは、採る段階の扱いがそのまま貯蔵期間に響くからです。採った実を入れる容器も、実どうしがぶつかって皮を押さないものを選びます。
今年たくさん採れた木は、来年少ない
ゆずはかんきつのなかでも隔年結果が大きい部類です。今年鈴なりだった木は、来年ほとんど実を付けないことがあります。山口県の指針は、着花や着果が多い木に摘蕾と早期摘果を勧めています。
夏のうちに青ゆずとして何割かを採ってしまうのは、この対策になります。「もったいないから全部残す」と考えると、翌年の収穫が消えます。採ることと残すことを毎年繰り返すほうが、長い目では採れる量が安定します。
植えてから実がなるまでは何年かかるか
「桃栗三年柿八年」に柚子を付け足す言い回しは、九年とも十八年とも続き方が一定しません。いずれも種から育てた場合の話で、苗木を植えた場合はもっと早くなります。山口県の栽培指針は、6〜7年生までは軽いせん定にとどめて結果開始を遅らせないようにすること、多田錦は結果期に入るのが早く7年生で安定することを挙げています。
植え付けは3月下旬から4月上旬で、その準備として2月下旬に植え穴を作るとされています。ゆずの栽植距離は3メートル×3メートル。庭に植えるなら、成木になったときの樹冠を先に想像しておく必要があります。
採ったあと、どこまで持つのか
ゆずが春先まで売り場に残るのは、産地が貯蔵の条件を細かく決めているからです。その条件が分かれば、家庭でどこまで真似できるかの見当もつきます。
| Process | Condition | Aim | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 予措 | 風通しのよい日陰で 3日ほど、5%減量 | 貯蔵の前に 水分を少し抜く | 山口県の 栽培指針 |
| 予措 (出荷時期別) | 2月以降出荷は5〜6% 1月末までは2〜3% | 出す月に 合わせて変える | 山口県の 栽培指針 |
| 本貯蔵 | 3〜5℃、 湿度85〜90% | 春先までの 長期貯蔵 | 山口県の 栽培指針 |
| 貯蔵 (徳島県) | 年内5℃、年明け3℃ 湿度80〜85% | 短期は予措3% 長期は5%以上 | 徳島県の 栽培管理 |
| 常温貯蔵 (多田錦) | Room temperature | 1月下旬まで | 山口県の 品種特性表 |
採ってすぐ冷やさず、まず水分を少し抜く
予措は、採った実を風通しのよい日陰に置いて水分を少し飛ばす工程です。山口県の指針では約3日で5%程度減量させ、日中30℃程度でも構わないが風が通る日陰がよく、納屋などの室内で行うとしています。減量の割合を確かめるため、予措前の果実をネットに20果ほど入れてまとめて重さを量っておく、という手順まで書かれています。
産地が貯蔵の前に必ずこの工程を挟むのは、冷やす前に皮の状態を整えておくためです。採ってすぐ袋に入れて冷蔵庫に放り込む手順は、産地の資料のどこにも出てきません。
貯蔵の温度は、時間をかけて下げていく
山口県の指針では、予措を終えた果実を厚さ0.02ミリのポリエチレン袋に入れ、280ミリ×410ミリの袋で約1.5キロ詰めにします。袋の中で結露すると腐敗果が増えるため、冷蔵庫に入れて果実の温度が下がるまでの2日ほどは袋の口を開けておき、入庫2日後に輪ゴムで縛ります。
庫内の温度は入庫時8℃に設定し、5日おきに1℃ずつ下げて25日間で3℃まで落とす、という段取りです。本貯蔵の温度と湿度は3〜5℃、85〜90%。徳島県の資料では、年内は5℃、年明け後は3℃、湿度80〜85%としています。いきなり冷やすのではなく、時間をかけて下げていることが共通しています。
家庭の冷蔵庫では何をどこまで真似できるか
家庭の冷蔵庫の野菜室は、産地の貯蔵庫より温度が高く、湿度も安定しません。それでも産地の条件から読み取れることはあります。皮の乾燥を避けること、袋の中で水滴がつかないようにすること、この2つです。
産地の手順をそのまま家庭サイズに落とすと、新聞紙に包んでから袋に入れる置き方になります。紙が水滴を受け、乾きすぎも抑えられるためです。採ってすぐ密閉せず、産地と同じように少し置いてから包みます。何日持つかは実の状態と採り方で変わるので、日数で言い切れる資料は見つかりませんでした。
使い切れないぶんは、皮と果汁に分けて残す
丸のまま持たせようとするより、用途ごとに分けたほうが残ります。果汁は搾って冷凍、皮は薄く削いで小分けにします。乾燥や粉砕で受けるときも、白い部分をどれだけ残すかで仕上がりの苦みが変わるので、表面の色のある層を中心に削ぎます。
皮の使い道はゆず皮の活用法にまとめています。搾ったあとの皮をそのまま捨てるのはもったいないので、先に皮を削いでから搾る順番にしておくと無駄が出ません。
旬を外した時期に、ゆずの香りを使うには
ここからは、通年で商品にゆずを使いたい場合の話です。生果は10月から12月に集中し、貯蔵ものも4月ごろで切れます。夏から秋にかけて黄ゆずの香りが要る商品を作るなら、生果を前提にした計画は成り立ちません。
皮を乾かすと、香りを持ち越せる
当社は国産の野菜と果物を温風で乾燥させ、粉に挽く加工を受けています。ゆずの皮も同じ流れで扱えます。温風乾燥なので、フリーズドライや焙煎、チップス、レトルトは対象外です。乾燥品の賞味期限は出荷日から6か月程度を見ています。
収穫の山と製造の時期をずらせるのが、乾燥にする最大の理由です。11月から12月に採れたものを乾かしておけば、翌春から夏の製造に回せます。生果のまま持たせようとすると、この幅は作れません。
粉にすると、少量で香りが載る
乾かした皮は、100メッシュ相当まで粉砕できます。粉にすると、生地やパウダー調味料に均一に混ざるようになり、刻んだ皮では出せない仕上がりになります。充填は10グラム以上の小袋から対応しています。
粉の細かさは用途で変えます。口当たりを消したい焼き菓子は細かく、粒感を残したいふりかけや七味の類はやや粗く。どちらにするかは、先に試作の仕上がりを見て決めたほうが早く落ち着きます。乾燥ゆずの規格.
来年のゆずの相談は、今年の夏に始まる
ゆずの収穫は年に一度しかありません。11月の搾汁用と10月の貯蔵用を逃すと、次は1年後です。原料を押さえたい量が決まっているなら、着色がはじまる前、つまり夏のうちに産地と話をしておく必要があります。
「旬だから今つくれる」という感覚と実務が逆になる理由は生鮮の枠は3〜6か月前に埋まる話にまとめています。ゆずは特に、採り時が用途で分かれるぶん、逆算する月が細かくなります。
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ゆずの時期がばらばらに語られるのは、話している内容が違うからでした。収穫時期は畑から採る日、出回り時期は貯蔵を含めて店頭に並ぶ期間、旬は使い道ごとに変わる言葉。この3つを分ければ、月がずれていても矛盾しません。
採る日は、カレンダーではなく実の色で決まります。緑のまま採れば青ゆず、3〜4分着色なら貯蔵用、7〜8分着色なら搾汁用。徳島県は3〜7分着色までに収穫を終えるとしています。同じ園地の木から、3回にわたって別々の目的で採られていきます。
出回りで言えば、4月からハウスの青ゆず、7月から露地の青ゆず、10月から黄ゆず、12月の冬至前が山。2026年の冬至は12月22日です。年が明けても貯蔵ものが4月ごろまで続きます。ゆずが手に入らない月は、ほとんどありません。
そして、出荷量の80.5%は加工に向かいます。全国の収穫量28,143.5トンのうち高知県が53.3%を占め、愛媛県は出荷の94.6%が加工向け、京都府は10.2%。「ゆずの産地」と「ゆずが買える場所」は別の地図になっています。売り場に並ぶ2割だけを見ていると、ゆずの一年は見えてきません。
