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The Work of "Subtraction" That Makes the Most of Kyoto Vegetables

Summary of this article
京野菜を活かす「引き算」の調理を、東京・神泉「ぽつら ぽつら」「うつら うつら」でミシュラン・ビブグルマンを獲得した料理人・米山有氏が語るコラムです。賀茂なすは炭の表面温度250〜300℃で油を敷かず輪切り炭火焼きに、九条ねぎは70〜80℃で20〜30分炊き、万願寺とうがらしは強火でさっと焼いて柚子を添えるなど、素材そのものの味を引き出す京野菜5選と家庭での実践ポイントを紹介します。

―塩も油もいらない、素材が教えてくれること―

A column written by Tamotsu Yoneyama, a chef who runs "Potsura Potsura" and "Utsura Utsura" in Shinsen, Tokyo, and earned a Michelin Bib Gourmand at both stores.Tamotsu Yoneyamaが綴るコラムです。京野菜を前にしたとき、料理人が選ぶべき「引き算」という仕事について語ります。

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何もしない美味しさとの出会い

子どもの頃、畑で真っ赤に実ったトマトを、もいだその場でかじった記憶はありませんか?
青臭さと、果汁の甘酸っぱさと、口の中いっぱいに広がる夏の香り。何の味つけもしていないのに、「こんなに美味しいんだ」と驚きとともに笑ってしまった——私にとって、料理の原点はそんな体験でした。

それから年月が経ち、料理人になって、ようやく思い出すようになったのです。
「ああ、あのときの味は“何もしない美味しさ”だったんだな」と。

子どもの味覚と「素材そのまま」の科学

幼少期にかじった畑のトマトが忘れられないのには、科学的な理由があります。収穫直後のトマトは糖度6〜8度、リコピンやグルタミン酸が最も活性化した状態。流通を経るうちに香気成分のヘキサナールは半減するとされ、畑で食べる味わいは文字どおり一期一会です。

京都の農家では、朝5時台に収穫したKyoto vegetablesをその日のうちに料理店へ届ける「朝採り直送」が根づいています。鮮度が味を決めるという考え方は、引き算の料理と深くつながっています。

賀茂なすが教えてくれること

京野菜というものには、その“何もしない美味しさ”があります。

たとえば賀茂なす。輪切りにして、油を敷かずに網に乗せ、じっくり炭火で焼いていくと、皮の中で果肉がふっくらと膨らみ、とろけるようにやわらかくなります。

ナイフを入れると、じゅわっと滲む果汁。ひと口で、まるで上質なステーキのような旨味と香ばしさを感じさせてくれる。何もかけず、塩すら不要です。ただただ、素材の甘みと火の力があればいい。

そんなとき、私はふと手を止めたくなるのです。
「これ以上、何かを足してしまってはいけない」と。

賀茂なすの炭火焼き|温度と時間の目安

Kamo eggplantを炭火で焼く際は、炭の表面温度250〜300℃が理想です。厚さ2cmの輪切りなら片面4〜5分ずつ、中心温度が85℃に達するととろける食感に仕上がります。油を使わない場合は、焼き網に薄く塩をふっておくと皮が張りつきにくくなります。

賀茂なすの旬は6月下旬〜9月上旬。京都市北区上賀茂や亀岡市が主産地で、直径10cm以上・重さ300g前後のものが最上とされます。

技術ではなく引き算の勇気

料理の技術というものは、積み重ねれば積み重ねるほど「何かを足す方向」に進みがちです。旨味を重ね、香りを重ね、食感を重ねて、一皿を豊かにしていく。

でも、京野菜と向き合っていると、逆に「削ぎ落としていく勇気」が必要になる。調味料も、手間も、飾りも、どこまで減らせるか。それを試されているような気さえするのです。

万願寺とうがらしなら、真夏の日に穫れたものを、強火でさっと焼いて表面を軽く焦がすだけでいい。そこに柚子をひと削り。それだけで一皿が完結する。余計なものを足さないことが、かえって料理に深みを与えてくれるのです。

それは、技術を捨てることではありません。むしろ、引き算こそが技術であり、経験の証だと思います。

九条ねぎに学ぶ“素材との対話”

たとえば九条ねぎを極弱火の湯でそっと炊くと、ぬめりの中に甘みと旨味が溶け出して、とろとろのスープになります。

ここに出汁を加えてしまえば、たしかに「料理」になるのかもしれない。
でも、私はあえて加えません。

素材が本来持っている味を引き出すこと。
そのまま受けとめること。

これは技術以上に難しく、料理人としての“姿勢”を問われる仕事です。

料理というのは、素材と対話をする営みだと思います。
「今日は、どう使われたいか」「どういう風に味わってもらいたいか」——そんな風に問いかけていると、不思議と余計な調味は消えていくのです。

九条ねぎの甘みを引き出す火入れのコツ

Kujo green onionを極弱火で炊くときの湯温は70〜80℃が適温です。沸騰させるとぬめり成分(フルクタン)が分解され、甘みが半減します。20〜30分かけてじっくり火を入れると、ねぎ本来の糖度が最大限に引き出されます。

九条ねぎは京都市南区九条が発祥。冬場(12〜2月)の霜降りねぎは糖度が8度を超え、生でも甘みを感じられるほど。浅葱と深葱の2系統があり、料理によって使い分けます。

引き算は素材への敬意

“引き算”というと、時に手抜きに聞こえるかもしれません。
でも、私は声を大にして言いたいのです。

「引き算」は、素材への最高の敬意です。

料理人が腕をふるうのではなく、素材に語らせる。
京野菜のような、力のある野菜たちは、その静かな語り口を確かに持っています。

だから私は、今日も余計な手を加えないように、ただ静かに火に向かい、野菜の声を聴いているのです。

引き算の調理で活きる京野菜5選

引き算の考え方が特に映える京野菜をご紹介します。賀茂なす(炭火焼き)、万願寺とうがらし(直火炙り)、九条ねぎ(弱火炊き)、Shogoin kabura(蒸し煮)、Shogoin daikon(薄味含め煮)。いずれも調味料を最小限にすることで素材の輪郭がくっきり浮かび上がります。

これらの京野菜は、Kyoto vegetable calendarで旬の時期を確認して仕入れると、引き算の調理がさらに活きてきます。

家庭で実践する「引き算」のポイント

家庭でも引き算の料理は実践できます。まず旬の京野菜を選ぶこと。次に、調味料は塩ひとつまみから始め、足りなければ少しずつ加える「引き算方式」で味を決めます。フライパンより魚焼きグリルや網焼きを使うと、油なしでも香ばしく仕上がります。

Dried vegetablesを使えば、水分が抜けた分だけ野菜の旨みが凝縮され、何も足さなくても深い味わいを楽しめます。保存もきくため、旬の京野菜を一年中味わう手段としてもおすすめです。

Kyoto vegetable columns to read together

引き算の料理をさらに深めたい方には、以下の記事もおすすめです。How to build a seasonal courseでは、季節ごとの京野菜をどうコースに仕立てるかを解説しています。また、火加減と京野菜の関係を知ることで、引き算の調理がさらに洗練されるでしょう。sustainable foodの観点からも、素材を活かす引き算の考え方は注目されています。

「引き算の料理」とは具体的にどういうことですか?

調味料・油・装飾を最小限にし、素材そのものの味わいを最大限に活かす調理法のことです。たとえば賀茂なすを油なしで炭火焼きにし、塩もかけずに提供するなど、余計な要素を削ぎ落とすことで素材の個性が際立ちます。

引き算の料理に向いている京野菜はどれですか?

賀茂なす・万願寺とうがらし・九条ねぎ・Shogoin kabura・聖護院大根が代表的です。いずれも素材自体の甘みや旨みが強く、最小限の調味で十分に美味しく仕上がります。

家庭でも引き算の調理は実践できますか?

はい、可能です。旬の京野菜を選び、魚焼きグリルやオーブンで油を使わず焼くだけでも十分です。味つけは塩ひとつまみから始め、素材の味を確かめながら足すのがコツです。

賀茂なすを美味しく焼くコツは何ですか?

厚さ2cmの輪切りにし、炭火またはグリルで片面4〜5分ずつ焼きます。中心温度85℃を目安にすると、とろける食感に仕上がります。油を使わない場合は、焼き網に薄く塩をふると皮がくっつきにくくなります。

引き算の料理と「手抜き」の違いは何ですか?

手抜きは工程を省くことですが、引き算は素材を深く理解したうえで不要な要素を意図的に削る技術です。素材の状態を見極め、最小限の火入れと調味で最大限の美味しさを引き出す判断力と経験が求められます。

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    Author of this article

    小島 怜のアバター Rei Kojima Agriture CEO

    CEO of Agriture Inc. Runs a contract processing and OEM business centered on dried vegetables and dried fruit. In partnership with farmers within Kyoto Prefecture, he pursues “sustainable food distribution” through the use of non-standard vegetables and support for sixth-industrialization. Drawing on extensive hands-on experience at manufacturing sites, he provides support that walks alongside every business considering OEM—from product planning and prototyping to small-lot handling, packaging design, and sales-channel development.

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