近江の伝統野菜とは?滋賀県選定19品目の特徴と旬・食べ方を解説
近江の伝統野菜は、琵琶湖を囲む滋賀県内で受け継がれてきた在来種群です。滋賀県は「原産地が滋賀県内で概ね明治以前の導入歴がある・外観や味等の特徴がある・種子が保存されている」の3条件で選定する「近江の伝統野菜」選定制度を運用しており、2025年時点で19品目が認定されています。そのうち「近江日野産日野菜」は2022年10月21日に農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録されました。
本記事では19品目を分類別に整理し、代表7品目を詳しく解説します。GI登録の日野菜、ねずみの尻尾のような形の山田ねずみ大根、首と葉が紫赤色の伊吹大根、比叡山麓の食用菊「坂本菊」、鷹の爪の約2倍の辛さを持つ弥平とうがらしなど、琵琶湖周辺で受け継がれる在来種をまとめます。
「伝統野菜」の定義と本記事の対象
「伝統野菜」には全国統一の定義がなく、認定機関によって基準が異なります。主要な認定機関の基準を整理します。
| 認定機関 | 主な基準 |
|---|---|
| 京都府「京の伝統野菜」 | 明治以前の栽培歴があり府内全域が対象(たけのこ含む、キノコ類・シダ類を除く、絶滅品目も対象) |
| 大阪府「なにわの伝統野菜」 | 概ね100年以上前から大阪府内で栽培 |
| 奈良県「大和の伝統野菜」 | 戦前から本県での生産が確認・独特の栽培方法・味や香り・形態・来歴の特徴 |
| 秋田県「あきた伝統野菜」 | 昭和30年代以前から県内で栽培 |
| 滋賀県「近江の伝統野菜」 | 原産地が滋賀県内で概ね明治以前の導入・外観や味等の特徴・種子の保存 |
本記事では滋賀県公式「近江の伝統野菜」の19品目を中心に紹介します。いずれも概ね明治以前の導入歴を持つ在来種で、19品目のうち水口かんぴょうは加工品名で認定されており、手剥き・天日乾燥の製法も認定対象です。
近江の伝統野菜とは?琵琶湖周辺の食文化
| エリア | 代表品目 | 地域特性 |
|---|---|---|
| 湖南(大津・草津・守山・湖南) | 近江かぶら、坂本菊、山田ねずみ大根、守山矢島かぶら、下田なす、弥平とうがらし | 比叡山麓と琵琶湖南岸の城下町・門前町 |
| 湖東(彦根・愛荘)/東近江・湖東南部(近江八幡・日野町) | 大藪かぶら、小泉紅かぶら、秦荘のやまいも、北之庄菜、豊浦ねぎ、日野菜 | 琵琶湖東岸の田園地帯 |
| 湖北(米原) | 赤丸かぶ、伊吹大根 | 伊吹山麓と琵琶湖北岸 |
| 湖西(高島) | 万木かぶ | 琵琶湖西岸の山間地 |
| 甲賀(甲賀・湖南) | 杉谷なすび、杉谷とうがらし、水口かんぴょう、鮎河菜 | 鈴鹿山脈西麓の甲賀・水口 |
湖南地域と甲賀地域に品目が集中し、比叡山麓の近江かぶら・坂本菊、琵琶湖東岸のかぶら類、甲賀・日野の辛み野菜と干瓢と、地形・歴史ごとに在来種が分化しています。琵琶湖周辺は江戸期から近江商人が産品を京都・大阪へ運ぶ流通拠点でもあり、かぶ類や蕪菜など漬物に向く品目が多く含まれます。
歴史的背景——近江商人と明治以前の在来種
- 日野菜 — 蒲生郡日野町が原産とされる紫紅色と白色のツートーン在来長蕪。塩漬けを基本とする「桜漬け」の素材として広く知られ、2022年10月21日に「近江日野産日野菜」がGI登録
- 坂本菊 — 大津市坂本地区で比叡山延暦寺との関わりのなかで受け継がれてきた食用菊。径3cmほどの鮮やかな黄色で香りが強い
- 水口かんぴょう — 甲賀市水口町で栽培されるユウガオから作る天日干しのかんぴょう
- 山田ねずみ大根 — 草津市山田地区で栽培される辛味大根。根の先端がねずみの尻尾のように細く伸びる形が特徴
近江の伝統野菜 19品目一覧と旬カレンダー
かぶ類7品目(日野菜を含む)
| 品目 | 特徴 | 産地 | 旬 |
|---|---|---|---|
| 赤丸かぶ | 直径9〜10cmの濃紅色円形 | 米原市 | 11〜3月 |
| 近江かぶら | 白色・扁平形の小〜大かぶ | 大津市 | 11〜2月 |
| 大藪かぶら | 葉は緑、根部はまだら紫赤色 | 彦根市 | 11〜12月 |
| 小泉紅かぶら | 長さ10cm余りのしもぶくれ型 | 彦根市 | 11〜12月 |
| 守山矢島かぶら | 紫と白のツートーン | 守山市 | 11〜1月 |
| 万木かぶ | 直径9〜10cmの球形・鮮やかな紅色 | 高島市 | 11〜3月 |
| 日野菜 | 紫紅色と白のツートーン長蕪(GI登録) | 蒲生郡日野町 | 10〜12月 |
大根・葉菜類
| 品目 | 特徴 | 産地 | 旬 |
|---|---|---|---|
| 伊吹大根 | 15〜20cm寸胴型、首と葉が紫赤色 | 米原市 | 11〜2月 |
| 山田ねずみ大根 | 根の先が細く伸びる辛味大根 | 草津市 | 12月 |
| 鮎河菜 | 茎・葉・蕾すべてを食べる菜花 | 甲賀市土山町鮎河 | 3〜4月 |
| 北之庄菜 | 首部が紫紅色、下部が白色 | 近江八幡市 | 11〜2月 |
なす・とうがらし・ねぎ類
| 品目 | 特徴 | 産地 | 旬 |
|---|---|---|---|
| 下田なす | 6〜7cm小ぶり・薄紫色でアク少なめ | 湖南市下田 | 8〜10月 |
| 杉谷なすび | 直径10cm・300〜400g・黒に近い濃紫 | 甲賀市甲南町杉谷 | 9月 |
| 杉谷とうがらし | 辛くなく甘みの「く」の字形 | 甲賀市甲南町杉谷 | 8〜10月 |
| 弥平とうがらし | タバスコの約3倍・鷹の爪の約2倍の辛さ | 湖南市下田 | 8〜10月 |
| 豊浦ねぎ | 九条系葉ねぎ、根元が曲がった青ねぎ | 近江八幡市豊浦 | 12〜3月 |
その他(かんぴょう・山芋・食用菊)
| 品目 | 特徴 | 産地 | 旬 |
|---|---|---|---|
| 水口かんぴょう | 天日干しのかんぴょう(ユウガオ由来) | 甲賀市水口町 | 通年(加工品) |
| 秦荘のやまいも | 全体が黒く凸凹、粘り強くまろやか | 愛荘町秦荘 | 11〜12月 |
| 坂本菊 | 径3cm・鮮やかな黄色・香り強い食用菊 | 大津市坂本 | 11月 |
100種前後の取り扱い品目がわかる商品カタログ
小ロット〜大ロットまで柔軟に対応できるアグリチャー

- 100g~の小ロットから販売可能
- 日本各地の伝統野菜の扱いあり
- ドライフルーツ/ハーブも対応可能
代表的な近江の伝統野菜7品目の特徴と食べ方
日野菜 — GI登録された紫紅色のツートーン蕪
| 旬 | 10〜12月 |
| 産地 | 蒲生郡日野町 |
| 向く料理 | 桜漬け、浅漬け、酢漬け、サラダ |
日野菜は、蒲生郡日野町(滋賀県湖東南部)が原産とされる紫紅色と白色のツートーンの長蕪です。太さ100円玉程度、長さ20cm程度の細長い形状(滋賀県公式)で、塩漬けしたあと酢や砂糖で仕上げると全体が美しい桜色に染まることから「桜漬け」として関西を中心に親しまれてきました。2022年10月21日には「近江日野産日野菜」として農林水産省の地理的表示(GI)に登録されています。
酢漬けの「桜漬け」が定番で、発色の美しさから贈答品にも使われます。旬の10〜12月に日野町の直売所で生の日野菜が出荷され、加工品(桜漬け)は通年流通します。
山田ねずみ大根 — ねずみの尻尾形の辛味大根
| 旬 | 12月 |
| 産地 | 草津市山田 |
| 向く料理 | おろし、蕎麦の薬味、浅漬け |
山田ねずみ大根は、草津市山田地区で栽培される辛味大根です。根の先端がねずみの尻尾のように細く伸びる形が名前の由来で、強い辛みと香りが持ち味。すりおろしたおろし汁は蕎麦の薬味として重宝され、信州坂城町の「ねずみ大根」と名前・形状ともに類似した系統とされています。
旬は12月と短く、草津市内の直売所で限定的に出荷されます。おろしを搾った汁に味噌・つけ汁を合わせて蕎麦をつける食べ方が好まれます。
伊吹大根 — 伊吹山麓の首紫赤の寸胴大根
| 旬 | 11〜2月 |
| 産地 | 米原市伊吹地区 |
| 向く料理 | おろし、煮物、漬物、味噌汁 |
伊吹大根は、米原市伊吹山麓で栽培される15〜20cmの寸胴型の辛味大根で、首の部分と葉が紫赤色に発色するのが特徴です。伊吹山麓で古くから栽培されてきた在来種で、地元では蕎麦の薬味として使われます。
おろしにすると辛味と香りが立ち、蕎麦・うどん・焼き魚の薬味に合います。煮物・漬物にしても肉質の緻密さが感じられます。11〜2月に米原市の直売所で出荷されます。
坂本菊 — 比叡山麓の食用菊
| 旬 | 11月 |
| 産地 | 大津市坂本 |
| 向く料理 | お浸し、酢の物、天ぷら、彩り |
坂本菊は、大津市坂本地区で栽培される食用菊で、径3cmほどの鮮やかな黄色と強い香りが特徴です。比叡山延暦寺の門前町・坂本地区で受け継がれてきた在来品種で、精進料理や秋の食卓の彩りとして使われてきました。旬は短く、大津市坂本地区の直売所で主に11月に出荷されます。
さっと茹でて酢の物やお浸しにすると香りと彩りが楽しめます。天ぷらにしても黄色が映えます。旬は11月の約1か月のみで、大津市内の直売所での入手が中心です。
鮎河菜 — 茎・葉・蕾すべてを食べる春の菜花
| 旬 | 3〜4月 |
| 産地 | 甲賀市土山町鮎河 |
| 向く料理 | お浸し、辛子和え、天ぷら、パスタ |
鮎河菜は、甲賀市土山町鮎河地区で栽培される在来の菜花で、茎・葉・蕾すべてを食用にできるのが特徴です。鈴鹿山脈西麓の鮎河地区で古くから栽培されてきました。
お浸し・辛子和えが定番で、天ぷらやパスタにも合う茎・葉・蕾まで食べられる菜花。3〜4月の短い旬期間に土山町鮎河の直売所で手に入ります。
万木かぶ — 湖西高島の紅かぶ
| 旬 | 11〜3月 |
| 産地 | 高島市安曇川町万木 |
| 向く料理 | 酢漬け、塩漬け、サラダ、煮物 |
万木かぶは、高島市安曇川町万木地区で栽培される直径9〜10cmの球形の紅かぶです。鮮やかな紅色と肉質の緻密さが持ち味で、湖西地域で受け継がれてきた品種です。酢漬けにするとピンク色が鮮やかに出て食卓を彩ります。
酢漬け・塩漬け・浅漬けが定番で、高島市の漬物文化を支える品目。11〜3月と旬が長く、高島市の直売所と湖西のJA直売所で流通します。
弥平とうがらし — 鷹の爪の2倍の辛さ
| 旬 | 8〜10月 |
| 産地 | 湖南市下田 |
| 向く料理 | 一味唐辛子、辛味調味料、味噌 |
弥平とうがらしは、湖南市下田地区で栽培される強烈な辛さを持つ在来唐辛子です。タバスコの約3倍・鷹の爪の約2倍の辛さとされ、少量でも強い辛みを感じます。主に乾燥させて一味唐辛子や辛味調味料、味噌に加工して使われます。
生で扱うより加工品として通年流通するのが一般的で、湖南市内の加工業者から全国発送される一味や味噌が手に入ります。
近江の伝統野菜の購入方法と保存のコツ
| 品目 | 主な入手先 | 時期 |
|---|---|---|
| 日野菜 | 日野町内JA直売所、桜漬けは通年 | 10〜12月 |
| 山田ねずみ大根 | 草津市内JA直売所 | 12月 |
| 伊吹大根 | 米原市内JA直売所 | 11〜2月 |
| 坂本菊 | 大津市坂本地区の直売所 | 11月 |
| 鮎河菜 | 甲賀市土山町鮎河の直売所 | 3〜4月 |
| 万木かぶ | 高島市安曇川町のJA直売所 | 11〜3月 |
| 弥平とうがらし | 湖南市の加工業者(一味・味噌で通年流通) | 加工品は通年 |
県外への通販・ふるさと納税
- 日野菜・桜漬け — 日野町のふるさと納税返礼品として通年発送
- 万木かぶの酢漬け — 高島市の加工品が通販で通年流通
- 弥平とうがらし加工品 — 一味唐辛子・辛味味噌が湖南市の業者から全国発送
- 秦荘のやまいも — 愛荘町のふるさと納税返礼品として秋冬発送
100種前後の取り扱い品目がわかる商品カタログ
小ロット〜大ロットまで柔軟に対応できるアグリチャー

- 100g~の小ロットから販売可能
- 日本各地の伝統野菜の扱いあり
- ドライフルーツ/ハーブも対応可能
近江の伝統野菜を守る取り組み
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| 「近江の伝統野菜」選定制度 | 滋賀県が独自に運用。19品目を選定 |
| 近江日野産日野菜 GI登録 | 2022年10月21日に農林水産省の地理的表示(GI)に登録 |
| JAレーク滋賀・JAこうか等の産地サポート | 各JAが在来種の生産・販路開拓を支援。JAこうかは「忍(しのび)」ブランドで甲賀の伝統野菜を流通 |
| 滋賀のおいしいコレクション(shigaquo.jp) | 県が運営する地域食材ポータル。伝統野菜も紹介 |
よくある質問
まとめ
近江の伝統野菜19品目は、琵琶湖を囲む湖南・湖東・湖西・湖北・甲賀の各地域で受け継がれてきた品種群です。2022年にGI登録された日野菜、辛味大根の山田ねずみ大根・伊吹大根、食用菊の坂本菊、強烈な辛みの弥平とうがらし、春の菜花の鮎河菜など、地形と歴史に根ざした品目が揃います。
秋冬はかぶ類と大根類、春は鮎河菜、夏〜秋はなす類と唐辛子類と、四季を通じて近江の在来種が楽しめます。ふるさと納税や直売所を通じて、琵琶湖周辺で受け継がれてきた品種を家庭でも味わえます。
参考文献・情報ソース
- 滋賀県「近江の伝統野菜」 — 県公式の選定制度ページ
- 農林水産省「近江日野産日野菜」GI登録 — 2022年10月21日登録
- 日本伝統野菜推進協会「滋賀県」
- 農業生物資源ジーンバンク「在来品種データベース」
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