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「旬だから今つくれる」は逆で、生鮮の枠は3〜6ヶ月前に埋まる

「旬なので、いま作れますよね」という問い合わせは、その品目の旬に入った週に届きます。いちごなら春、梨なら初秋。店頭に実物が並んでいるのだから原料はあるはずだ、という読みは自然です。

ただ、受託する側の返事は「その旬は難しいです」になります。一定数量を確保したい場合、旬の時期に依頼しても遅い。乾燥機に入れる前に、生鮮をこちらで押さえておく必要があるからです。

旬は、作れる合図ではなく、すでに枠が埋まったという合図に近い。このズレが、年内発売を狙った企画がまるごと一年ずれる原因になります。

目次

旬に入ってから届く相談は、その年の旬に間に合わない

商品企画の側から見ると、旬は情報が一番集まる時期です。市場に実物が出て、産地の作柄が話題になり、社内でも「これでやろう」と話が決まる。決まった瞬間に相談が来ます。その瞬間が、加工側にとってはいちばん動けないタイミングです。

春にいちごの話をもらっても、動けるのは翌年になる

いちごの旬は春です。春に相談をいただいて、その春のいちごで一定数量を組むことはできません。その量を押さえるには、冬のうちに問い合わせをもらって、生鮮を確保してもらう流れに入っておく必要があります。

フルーツも野菜も、旬の3〜6ヶ月前に相談をいただくのがベターです。3〜6ヶ月というのは、試作や包材の話をする時間ではなく、生鮮を手当てするための時間です。

先に埋まるのは乾燥機の枠ではなく、畑の側

「加工枠が空いていれば作れる」と思われがちですが、詰まるのは手前です。乾燥機が空いていても、その日に入れる生果がなければ何も動きません。発売日から逆算するときは、加工枠の前に原料の手当てまで遡ってスケジュールを引くことになります。

工程をどこまで委託できるか、発売日からどう逆算するかはドライフルーツのOEMで甘い品種を選ぶと失敗する理由で工程順に整理しています。この記事では、その手前にある時間の話だけを扱います。

なぜ生鮮を先に押さえないと数量が組めないのか

事前確保が要る理由は、精神論でも段取りの好みでもありません。乾燥という加工が、原料を大量に食う加工だからです。

製品1kgの裏に、生果は10kg以上ある

歩留まりは実測で7〜10%です。水分量から計算した理論値とは乖離します。皮・芯・種・ヘタを落とし、工程でもロスが出るためです。

見ておきたい数字実測
歩留まり7〜10%
生果1kgから取れる製品70〜100g
製品1kgをつくるのに要る生果10〜14kg

製品の数量を10倍以上に読み替えたものが、産地に伝えるべき数量になります。数量の桁がこれだけ変わる以上、「余っていたら分けてもらう」では成立しません。収穫が始まる前に、誰の畑からどれだけ引くかを決めておく作業が先に要ります。

規格外を使うと、必要な生果はさらに増える

規格外品を原料にすると、原料単価は下がります。一方で傷みのある箇所を取り除く工程が入るため、歩留まりは落ちます。7%を下回ることもあります。

つまり規格外を選んだ時点で、押さえるべき生果の量はさらに増えます。原価が下がる話と、確保量が増える話は同時に来ます。前倒しで相談する理由が、ここでもうひとつ増えるわけです。仕入れ側から見た確認項目は業務用ドライフルーツの仕入れ先を見極める7つの基準にまとめています。

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いま相談すると、どの旬に手が届くのか

旬から逆算した表はよく見かけますが、企画を進めている側が知りたいのは逆向きの情報のはずです。いまが何月で、これから相談して間に合うのはどの品目か。同じ目安を、相談する側の時間軸に並べ替えます。

相談する時期から見た早見表

相談したい時期手が届く旬と品目
前年の秋〜冬春のいちご
冬〜春先夏のもも
春〜初夏初秋の梨
初夏〜夏秋のりんご
初夏〜初秋晩秋〜冬の柑橘

初夏に相談をいただいたなら、秋のりんごと、その先の柑橘が射程に入ります。逆に、初夏の時点で春のいちごを狙うのであれば、狙うのは翌年の春です。半年先の話をしているつもりでも、実際には一年半先の発売を組んでいることになります。

収穫期を1回逃すと、次は1年後になる

加工枠は融通が利きます。来月が埋まっていても再来月がある。収穫期にはその融通がありません。逃した瞬間、次の機会は12ヶ月後です。

年内に出したい商品があるなら、春から夏のうちに品目を確定させておくのが安全です。品目が決まっていないまま秋を迎えると、その年の棚には間に合いません。

原料を持ち込むか、調達から相談するかで動く時期が変わる

Agritureは京都を拠点に国産の乾燥加工を受託していて、原料の持ち込みも、調達からの相談も受けています。どちらを選ぶかで、前倒しの中身が変わります。

持ち込みなら、畑と話すのは依頼する側

すでに産地とつながっている場合、生鮮を押さえる役はそちらに移ります。加工側が見るのは、入ってくる量と時期です。

注意したいのは、持ち込みでも前倒しが消えないことです。必要な生果は製品の10倍以上になるため、産地との約束のほうが先に必要になります。持ち込む量を決めるには、製品の数量が決まっていなければなりません。

調達から任せるなら、品目と数量を先に固める

調達も含めて相談をいただく場合、こちらが産地に数量を伝えます。そのために早い段階で決まっていてほしいのは、次の4つです。

  • 品目(いちごなのか、りんごなのか、柑橘なのか)
  • 製品としての数量(生果の必要量は、ここから逆算します)
  • 用途と形状(そのまま食べるのか、粉末にするのか、お茶に入れるのか)
  • 必要な日持ち(ここで乾燥方式が決まります)

用途と形状を後回しにすると、歩留まりの前提が動きます。柑橘のように、カットするか丸ごと粉砕するかで使える部分が変わる品目では、必要な生果の量そのものが変わってしまいます。カット形状や水分率の詰め方は乾燥野菜のカスタム加工で扱っています。

柑橘は年によって実の付き方が変わる

ここまでは1年の中の話でした。柑橘にはもうひとつ、年をまたぐ事情があります。

裏作の年は仕入れ値が上がり、製品原価には10倍以上で乗る

柚子やすだちのような柑橘には、収量が落ちる年があります。産地では裏作と呼ばれ、その年は仕入れ値が上がります。

歩留まりの話と重ねると、この値動きの重さが見えます。製品1kgの裏に生果が10〜14kgある以上、生果の単価が動けば、製品側にはその量のぶんだけ乗ってきます。柑橘は乾燥の工程で種が落ちるぶん歩留まりがさらに下がるので、条件はもう少し厳しくなります。

種を捨てずに済ませる方法はあります。自社の柚子チップは種ごと丸ごと粉砕することで、捨てる部分をなくしています。粉末やチップが出口なら取れる手です。用途ごとの粒度の考え方は柑橘パウダーの製法と選び方で解説しました。ゆず自体の収穫の見極めはゆずの収穫時期が参考になります。

豊作の年にまとめて乾燥し、どこまで置けるかは方式で決める

対策は、豊作の年にまとめて乾燥しておくことです。乾燥品は生果より日持ちするので、収量と価格が有利な年に仕込んで在庫で回せば、原価が読めます。「今年は柑橘が高い」と言われる年に慌てて作るより、前年に確保した在庫から出すほうが安定します。

どこまで置けるかは、乾燥方式で変わります。国産・無添加・砂糖不使用でつくった乾燥品の賞味期限は6ヶ月程度で、糖度が高い品目や品種はさらに短くなります。1年以上を狙うならフリーズドライです。作り置きの計画は、方式とセットで決めることになります。方式ごとの向き不向きはフリーズドライと乾燥野菜の違いで比べられます。

旬の最中に相談をもらったら、私たちはこう返しています

とはいえ、旬に届いた相談を「来年です」の一言で閉じることはしていません。その年にできることと、翌年に向けて決められることを分けて返すようにしています。

その年に動かせるのは、すでに乾いている品目

生鮮の確保が前提になるのは、新しく乾かす品目です。すでに乾燥させてある品目で組めるなら、収穫期の制約は外れます。企画の趣旨が「国産の果実を使う」ところにあるなら、品目を差し替えて年内に出し、狙っていた果実は翌年の本番に回す。この組み替えは、旬のうちに相談をいただければ間に合うことがあります。

来年に向けて、いま決めておけること

旬の最中は、実物を手に取って試せる時期でもあります。翌年の本番に向けて、この期間に固めておけることがあります。

  • 品種を絞る。甘さが強すぎず、酸味も強すぎないものを選ぶ
  • 出口を決める。そのまま食べるのか、粉末か、お茶に入れるのか
  • 数量を置いてみる。製品の数量から、必要な生果を10倍以上で見積もる
  • 相談の月をカレンダーに入れる。旬の3〜6ヶ月前に戻して予定を切る

品種の絞り込みは、旬のうちにしかできません。乾燥させると水分が抜けたぶん糖が濃縮されるため、生で食べておいしい品種が、乾燥させてもおいしいとは限らないからです。糖度が高すぎると甘さが過剰になり、えぐみとして出ます。製法ごとの仕上がりの違いはドライフルーツの製造方法でも触れています。

旬に届く相談は、遅すぎる相談ではありません。翌年の旬に向けては、ちょうどいい時期の相談です。カレンダーを一年ぶんずらして見る。それだけで、同じ企画が間に合う話に変わります。

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よくある質問

旬の時期に問い合わせても、その年のうちに作ってもらえませんか?

一定数量を確保したい場合は難しいです。メーカー側が生鮮を押さえる必要があるため、事前の問い合わせが要ります。フルーツも野菜も、旬の3〜6ヶ月前にご相談いただくのがベターです。すでに乾燥させてある品目で組む場合は、この制約が外れます。

いちごで商品をつくりたい場合、いつ相談すればいいですか?

いちごの旬は春なので、前年の秋から冬にご相談ください。冬のうちに問い合わせをいただき、生鮮を一定数量確保してもらう流れになります。春に入ってからのご相談は、翌年の春に向けた準備として進めます。

相談が遅れて収穫期を逃すと、どうなりますか?

次の収穫期まで1年待つことになります。加工の枠は月をずらせますが、収穫期はずらせません。年内に出したい商品があるなら、春から夏のうちに品目を確定させておくのが安全です。

生鮮はどれくらいの量を確保しておく必要がありますか?

歩留まりは実測で7〜10%です。生果1kgから取れる製品は70〜100g、製品1kgをつくるには生果が10〜14kg要ります。規格外品を使う場合は傷んだ箇所を取り除く工程が入るため、7%を下回ることもあります。製品の数量を10倍以上に読み替えた量が、産地に伝える数量になります。

柚子やすだちは、どの年に仕込むのがいいですか?

豊作の年です。柑橘には収量が落ちる年(裏作)があり、その年は仕入れ値が上がります。乾燥品は生果より日持ちするので、収量と価格が有利な年にまとめて乾燥し、在庫で回すと原価が読めます。ただし国産・無添加・砂糖不使用の賞味期限は6ヶ月程度です。それ以上置く前提の商品は、包装形態や保管条件から別途ご相談ください。

原料を自社で持ち込む場合も、早めの相談は必要ですか?

必要です。持ち込みでも、産地から引く量を決めるのは収穫期の前になります。製品の数量が決まっていないと生果の必要量が出せないため、品目・数量・用途と形状・必要な日持ちを先に固めておくと話が早く進みます。

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    この記事を書いた人

    小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO

    株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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