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物価高と「物流2024年問題」が食品ロスを増大——クラダシ調査、78社のリアルな実態

2026年4月8日、フードロス削減サービスを運営する株式会社クラダシが、食品関連事業者78社を対象とした最新の意識調査結果を公表した。調査によれば、約78.2%の事業者がすでにフードロス削減に取り組んでいる一方、「物価高による需要変化」と「物流の制約」という新たな2大要因がフードロスを増大させていることが明らかになった。

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調査概要:78社が答えたリアルな現場の声

この調査は2026年1月28日から2月27日にかけて実施され、食品関連事業者78社から有効回答を得た。フードロス削減への取り組み状況、その動機、そして現在直面している課題について幅広く聞き取りが行われた。

主要な結果として、フードロス発生率が「1%未満」と答えた企業が前回調査から7ポイント増加して28.2%に達し、削減努力の成果が数字に現れている。一方で「廃棄コスト削減」を削減動機に挙げた企業は85.3%(最多)と高く、物価高の波が企業行動を変えつつある実態が浮かぶ。

「物流の制約」が突如フードロス要因として浮上

今回の調査で最も注目すべき発見は、フードロス増加要因として「物流の制約」が新たに16.7%の事業者から挙げられたことだ。前回の2024年調査ではこの回答はゼロだった。わずか2年で「ゼロ」から「6社に1社」に急増した背景には、2024年問題がある。

2024年4月に施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの年間時間外労働が960時間に制限された。これによって輸送キャパシティが縮小し、生鮮食品の配送遅延や未着が増加。消費期限・賞味期限の短い野菜や日配品は、輸送が1日遅れるだけで廃棄対象となるケースがある。物流コストの上昇も重なり、食品事業者の経営を直撃している。

「物価高による需要変化」をフードロス要因として挙げた事業者は83.3%で、こちらも前回比27.8ポイントという大幅増だった。物価上昇で消費者が購買を抑制すると、小売店頭での売れ残りが増える。需要予測の難易度が上がり、発注過多→廃棄という連鎖が起きやすくなる構造だ。

再流通サービスの活用が急増:セーフティーネットとして定着

課題が深刻化する一方で、対応策として再流通サービスの活用が急拡大している。クラダシのような賞味期限間近商品の売り場を提供するサービスの利用率は70.5%に達し、前回比13.08ポイント増となった。94.9%の事業者が「フードロス対策のセーフティーネットになり得る」と評価しており、業界内で一定の信頼を得た段階に入っている。

生産量調整や値引き販売を行う企業も約52.5%あり、複数の対策を組み合わせるアプローチが主流になりつつある。

構造的問題を直視する必要性

今回の調査結果が示すのは、フードロス問題が単なる「余剰在庫」の問題ではなく、物流インフラの制約や物価変動といったマクロ経済の影響を受ける複合的な構造問題であるという現実だ。

日本の食品ロスは令和5年度で年間約464万トン(環境省・農林水産省発表)。1人あたりに換算すると毎日おにぎり1個分の食品が捨てられている計算になる。政府は2030年度までに食品事業者の食品ロスを2000年比で60%削減する目標を掲げているが、「物流の制約」という新たな課題は、その達成をより困難にする可能性がある。

農林水産省もこの問題を注視しており、物流効率化と食品ロス削減を一体的に推進する政策立案が求められる局面に入っている。Too Good To Goのようなフードロス削減アプリの普及とともに、物流課題への対応が今後の鍵になるだろう。

野菜・農産物への影響:産地から食卓までの新たなリスク

この問題は野菜の流通にも直結する。生鮮野菜は他の食品に比べて消費期限が短く、物流の遅延や滞留の影響を最も受けやすい品目だ。農家が丹精込めて育てた野菜が、消費者に届く直前で廃棄されるケースが増えれば、農業経営にとっても大きな打撃となる。

規格外野菜とフードロスの関係は以前から問題視されてきたが、物流2024年問題が加わることで、規格内野菜でさえ廃棄リスクにさらされる新局面が到来しつつある。食品サプライチェーン全体を見直す契機として、今回の調査結果を捉える必要がある。

今後の展望:テクノロジーと政策の連携が鍵

物流制約への対応策として期待されるのが、AIを活用した需要予測・配送最適化だ。複数の食品メーカーがAIシステムを導入し始めており、特定の製品では廃棄率を大幅に下げる成果も出ている。また、小売・メーカー・物流が連携したデータ共有プラットフォームの構築も急務だ。

フードロス削減は単なるコスト削減の話ではない。地球環境への負荷軽減、食料安全保障の強化、農業経営の安定化に直結するSDGsの核心課題だ。物価高と物流問題という現実的な壁に直面しながらも、食品事業者の78%がロス削減に取り組んでいるという事実は、日本の食品産業の意識変革を示している。

出典:クラダシ調査 時事ドットコム(2026年4月8日)世界食品廃棄コスト急増の背景

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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