見た目やサイズが基準を満たさないという理由で、市場に流通せず廃棄される「規格外野菜」。本来まだ十分に食べられるにもかかわらず、多くが廃棄されており、フードロスの大きな要因の一つとなっています。近年では、こうした規格外野菜の活用が注目され、食品ロス削減やサステナブルな食のあり方に向けた取り組みが各地で進んでいます。本記事では、規格外野菜とフードロスの関係性を整理し、具体的な解決策や企業・自治体による事例を紹介します。規格外野菜とフードロスの深い関係性あなたは、スーパーに並ぶ野菜たちが完璧な形をしていることに気づいたことがありますか?実は、その裏には大きな問題が隠れています。形や大きさが不揃いなだけで、収穫全体の約13%の野菜が市場に出回らず、フードロスにつながっているのです。規格外野菜とは、味や栄養には問題がないにもかかわらず、見た目だけの理由で出荷されない農産物のこと。大きすぎたり、小さすぎたり、形がいびつだったり、色にムラがあったりと、その基準はさまざまです。農林水産省の統計によると、2022年の野菜収穫量は1,284万トン。そのうち出荷されたのは1,113万トンにとどまり、約13%にあたる野菜が流通に乗っていません。これらの多くが、規格外として扱われていると推定されています。参考:農林水産省「令和4年産野菜の作付面積、収穫量及び出荷量の動向」驚くべきことに、規格外野菜の多くは、味や栄養価に問題がないにもかかわらず廃棄されています。これは日本だけでなく、世界的な問題となっているのです。なぜ規格外野菜は廃棄されるのか?「なぜ食べられる野菜が捨てられるの?」この疑問を持つ人は多いでしょう。規格外野菜が廃棄される背景には、流通システムと消費者心理という2つの大きな要因があります。市場では野菜の大きさや形に関する厳密な規格が設けられており、これらは品質の安定化や流通の効率化を目的としています。規格を定めることで、梱包や輸送が容易になり、店頭での見栄えも良くなるのです。もう一つの要因は、私たち消費者の「見た目の良し悪し=商品の良し悪し」という強い思い込みです。完璧な見た目の野菜を選ぶ消費行動が、結果的に規格外野菜の廃棄を促進しているのです。農家にとっても大きな痛手です。例えば、ある農業法人では生産する大根の約2割、年間200トン程度を規格外として廃棄せざるを得ない状況に直面しています。規格外野菜を活用する革新的な取り組み近年、規格外野菜の廃棄問題に立ち向かう革新的な取り組みが増えています。世界各国でさまざまなアプローチが生まれ、日本でも多くの企業や団体が解決策を模索しています。ヨーロッパでは、スーパーマーケットが規格外野菜の販売に積極的に取り組んでいます。安売り志向のスーパーでは規格外野菜の詰め合わせを販売し、高級志向のスーパーでは「環境問題を考える運動」の一環として規格外野菜を宣伝しています。これにより、生産者は規格外野菜を売ることができ、小売業者は新たな顧客層を獲得し、消費者は安く野菜を手に入れられるという三方よしの関係が生まれています。アメリカでは「Imperfect Produce(インパーフェクト・プロデュース)」というサービスが注目を集めています。規格外野菜を農家から買い取り、スーパーの定価より30~50%安い価格で消費者に届けるビジネスモデルを確立しました。日本でも「ロスヘル」という野菜宅配サービスが登場しています。傷や不揃いが理由で捨てられてしまう規格外野菜を全国から調達し、一般的な食品売り場より25~30%安い価格で提供しています。加工品としての新たな価値創造弊社が展開する乾燥野菜ブランド「OYAOYA(おやおや)」では、京都の規格外野菜を中心にアップサイクルし、食材としての魅力を最大限に引き出した商品づくりを行っています。形が不揃いだったり、サイズが規格外と判断された野菜でも、乾燥加工することで保存性と価値を高め、“捨てられるはずだった野菜に新たな命”を吹き込んでいます。例えば、傷が入りやすく形も曲がる万願寺とうがらしや賀茂なす、熟してしまい出荷できないトマトなども、乾燥というプロセスを経ることで、料理に彩りや香りを添える個性的な素材へと変化します。規格外野菜活用の課題と未来展望規格外野菜の活用には、まだ乗り越えるべき課題があります。需要と供給のバランスが最大の課題です。規格外野菜の供給は天候や季節によって大きく変動するため、安定した事業モデルの構築が難しい面があります。また、生産者側のリテラシーや加工設備の不足も課題となっています。しかし、未来は明るいと言えるでしょう。SDGsへの関心の高まりや、消費者の環境意識の向上により、規格外野菜の価値が再評価されつつあります。政府も食品ロス削減に向けた取り組みを推進しています。2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、規格外野菜の有効活用も推奨されています。茨城県では「いばらきフードロス削減プロジェクト」を立ち上げ、フードロスを抱える事業者と活用したい事業者をマッチングする無料の窓口を設置しています。私たちにできること規格外野菜の問題解決には、生産者、流通業者、そして私たち消費者の意識改革が不可欠です。消費者として、「見た目」だけで野菜を選ぶ習慣を見直してみませんか?規格外野菜を積極的に購入したり、規格外野菜を活用する企業の商品を選んだりすることで、フードロス削減に貢献できます。一人ひとりの小さな行動が、大きな変化を生み出す第一歩となるのです。持続可能な社会の実現に向けて、規格外野菜の活用は重要な鍵となります。Agritureのような企業の取り組みは、未利用・規格外野菜を乾燥加工することで食品ロス削減と循環型社会の実現を目指す、まさに時代の要請に応えるものと言えるでしょう。詳しくは弊社のサスティナブルの取り組みをご覧ください。持続可能な未来のために、私たちができることを一緒に考えていきましょう。