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年間200万トンの籾殻を食品に——日本発プロジェクト「Kami-神-」がフードロス×農業副産物の常識を変える

この現実に正面から向き合う日本発プロジェクトが、2026年4月13日に始動した。株式会社NINE SENSEが立ち上げた「Kami – 神 –」は、籾殻を農業副産物として廃棄するのではなく、食の資源として再定義することを目指す取り組みだ。4月15日(水)10:00にプレオープンを迎える。

目次

籾殻200万トンとは何か——数字で見る「捨てられた資源」の規模

日本は世界有数の稲作国家だ。農林水産省の統計によると、国内のコメ生産量は年間約700万トン前後で推移している。稲穂から玄米を取り出す過程で発生する籾殻は、コメ重量の約20〜25%に相当するとされ、これが年間200万トンという数字を生む根拠だ(出典:農研機構)。

比較対象として考えてみると、環境省が発表した日本の食品ロス量は年間約464万トン(2022年度)。籾殻200万トンはその約43%にあたる。つまり、日本が「食品ロス削減」として取り組んでいる問題と同スケールの廃棄が、稲作の現場で静かに起き続けているわけだ。

これまで籾殻は、燃料や畜産の敷料(しきわら)、農地へのすき込みなどに一部活用されてきた。しかし技術的・経済的コストから有効活用の比率は低く、「農業副産物」という言葉が示す通り、主役ではなく脇役——あるいは処理すべきコストとして扱われてきた。

「Kami – 神 -」が挑む発想の転換:副産物から食品資源へ

「Kami – 神 -」プロジェクトのユニークさは、籾殻を「廃棄コストの削減」という守りの発想ではなく、「食文化に組み込む」という攻めの発想で位置づけ直している点にある。

プロジェクトが掲げる3つのテーマは以下の通りだ:

テーマ 内容
農業副産物の有効活用 籾殻を食資源として再利用する技術・商品の開発
未利用資源の価値創出 「捨てるもの」に経済的・文化的価値を付加する
食資源の再定義 現代の食文化における「食べられるもの」の概念を拡張する

代表の深見純氏は「日本には、まだ価値として見出されていない資源が数多く存在しています。Kami – 神 – は、それらに新たな視点を加え、現代の食文化へとつなぐ取り組みを進めていきます」とコメントしている。

「神(Kami)」という命名には、日本固有の自然哲学への敬意が込められている。稲作と神道の深い結びつき——天照大神が稲穂を授けたとされる日本神話——を背景に、籾殻という「米の衣」に文化的な意味を見出そうとする姿勢が感じられる。

農業循環経済の文脈:フードロス削減を超えた可能性

このプロジェクトが重要なのは、単なるフードロス削減の文脈を超えているからだ。

現在議論されているフードロスの大半は、環境省が発表した食品ロス464万トンのように、食べられる状態の食品が廃棄されることを問題視している。しかし「Kami – 神 -」が向き合うのは、そもそも「食品」として認識されてこなかった農業副産物だ。これは概念そのものを問い直す、より根本的なアプローチと言える。

世界に目を向ければ、世界の食品廃棄コストは年間5400億ドルに上るとされる。この問題の多くは「食べ物になりうるものを食べ物として見ていない」ことに起因する。籾殻の食品化は、その解決策の一端を日本から世界へ発信する試みとも読める。

また、フードテックの文脈でも注目に値する。近年、Too Good To Goのようなフードシェアリングサービスが日本市場に参入し、消費者の「食品廃棄への意識」は確実に高まっている。「Kami – 神 -」はその意識をさらに上流——生産段階の副産物——にまで引き上げようとしていると言えるだろう。

消費者として何ができるか——今すぐ取れるアクション

「Kami – 神 -」は4月15日にプレオープンを迎えるばかりで、現時点では商品ラインナップの詳細は公表されていない。しかし、agriture読者として以下のアクションが今すぐ取れる。

アクション 具体的な方法
プロジェクトをフォローする 4月15日以降にnine-sense.jpをチェックし、籾殻食品の情報を入手する
農家・農産品の選び方を見直す 購入するコメやコメ加工品のブランドが副産物活用に取り組んでいるか確認する
地域の農業副産物に関心を持つ 地元の農産物直売所や道の駅で「もみ殻」や「米糠」を使った商品を探してみる
食品ロスの視点を広げる 「食べられるのに捨てられる」だけでなく「価値があるのに見えていない」副産物の存在を知る

農業副産物の食品活用——日本発イノベーションの系譜

実は日本には、農業副産物を食品化した歴史がある。米糠から搾る「米油」、酒粕を使った「粕漬け」、大豆の搾りかす「おから」——これらはいずれも、かつては副産物として扱われていたものだ。

しかし籾殻は、これらとは一線を画す難題だった。ケイ素(シリカ)を多く含む硬い外皮は、食品化の技術的ハードルが高い。だからこそ「Kami – 神 -」が実現しようとしていることは、単なるビジネスモデルの刷新ではなく、食の可能性の境界を書き換える挑戦だ。

農研機構の資料が示す通り、籾殻のシリカ含有率は約20%にのぼる。このシリカは機能性素材として半導体・化粧品業界から注目されているが、食品への応用はまだ未知数の領域が多い。「Kami – 神 -」がどのようなアプローチで「食品化」を実現するのか——4月15日のプレオープンで明かされる詳細に注目が集まる。

年間200万トンという「捨てられた宝」が、日本の食卓に新しい物語をもたらす日は、もう目前に迫っている。

【情報元】
株式会社NINE SENSE プレスリリース(PR TIMES、2026年4月13日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000130248.html

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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