柚子の皮の使い道は干すと広がる、果汁と種まで使い切る手順
鍋の仕上げに皮を少し削いだら、あとは黄色い実がひとつ残る。果汁を搾ったら、今度は皮とワタと種が残る。ゆずは、どこかを使うたびに別のどこかが余る果物です。
農林水産省の令和5年産特産果樹生産動態等調査では、ゆずの全国の出荷量26,734トンのうち、加工向けが21,519トンを占めています。出荷量の8割が、生のまま食卓に出るのではなく、搾る・煮る・干すといった加工に回っている計算です。家庭でゆずを持て余すのは、扱いが下手だからではなく、この果実がもともと「そのまま食べる」設計になっていないからです。
このページでは、皮・果汁・種・薄皮という部位ごとに何ができるのかを整理したうえで、苦味の抜き方、皮を干して季節を越えて使う手順、果汁の使い切り方、煮て保存食にするときの配合まで並べました。数字はできるだけ、高知県や徳島県つるぎ町、東京都台東区、練馬区立リサイクルセンター、広島県といった公的機関が公開している資料でたどれるものだけを載せています。乾燥野菜と乾燥果実の受託加工をしている立場から、家庭の天日干しと工場の乾燥がどう違うのかも書き添えました。
ゆずは皮・果汁・種・薄皮のどこまで食べられるのか
「ゆずの使い道」を調べる人の多くは、実際には皮だけを探しているわけではありません。果汁を搾ったあとの皮、皮を削いだあとの実、そして毎回捨てている種。ひとつの果実から出てくる余りものは4種類あり、それぞれ向く先が違います。
最初に、部位ごとの持ち味と向いている使い方を一覧にしておきます。この表を頭に入れておくと、ゆずを手にした時点で「どこから手をつけるか」の順番が決まります。
| 部位 | 持ち味 | 向いている使い方 | 扱いの注意 |
|---|---|---|---|
| 外皮 (黄色い部分) | 香りがいちばん強い | 薬味、吸い物、 ゆず塩、乾燥、粉末 | 薄く削ぐ。 厚くむくと苦味が乗る |
| 白いワタ (アルベド) | 苦味と、 とろみのもと | 甘煮、佃煮、 マーマレード | そのままでは苦い。 下ゆでと水さらしが要る |
| 果汁 | 鋭い酸味 | ポン酢、酢の代用、 飲み物、合わせ酢 | 搾ったら早めに 冷蔵か冷凍へ |
| 薄皮・ じょうのう | ワタと同じく とろみのもと | ジャムを煮るときに 一緒に加える | そのまま食べると 乾いた食感になる |
| 種 | ぬめりが出る | ジャムのとろみ付け | 布に包んで煮る。 使う前に取り出す |
| へた | 使い道はない | 取り除く | 下ごしらえの 最初に落とす |
ゆずはそのまま食べる柑橘ではない
みかんのように手でむいて口に入れることは、できなくはありません。ただ、ゆずは外皮も白いワタも薄皮も厚く、種が多く、甘みがほとんどない強い酸の果実です。房を一つ食べただけで舌が縮み、残りは手つかずになります。
冒頭に挙げた出荷量の内訳が、そのまま答えになっています。全国の出荷量26,734トンに対して加工向けが21,519トン。産地から出ていくゆずの大半は、はじめから搾られる・煮られる・干されることを前提に流通しています。家庭でも、同じ前提に立って手を動かしたほうが早く片づきます。
香りは外皮の黄色い部分だけに集まっている
皮の表面を指の腹でこすると、ぷつぷつした粒がつぶれて香りが立ちます。この粒に香りがたまっているので、料理に香りを移したいときは、黄色い部分だけを薄く削ぐのが基本になります。
徳島県つるぎ町が公開しているさばのゆずみそかけの作り方には、「最後にゆずの表皮をこすって混ぜる」という一行があります。刻んで混ぜるのではなく、表皮をみそにこすりつけて香りだけを移す手つきです。削ぐ・刻む・こする・すりおろすの4つは、同じ皮でも仕上がりが別物になります。
- 削ぐ……ピーラーで黄色い部分だけを薄く。刻んで薬味にする、干す前の下ごしらえに
- 刻む……削いだ皮を千切りや細かいみじんに。なますや漬物、混ぜご飯へ
- こする……皮の表面をすりつけて香りだけを移す。みそやたれの仕上げに
- すりおろす……香りがいちばん強く出る。吸い物や焼き魚に、出す直前で
白いワタは苦いが、煮ると主役になる
白いワタは、薬味として使うぶんには邪魔者です。ところが砂糖と一緒に煮る料理では、逆にワタのある皮が使われます。高知県の中央東農業振興センターが公開しているゆずジャムの作り方には「ゆず皮はペクチンが多いので」という説明があり、ワタごと煮ることで自然にとろみがつくことが前提になっています。
同センターのゆずマーマレードは、皮を5cm長さの薄切りにして一晩水にさらし、白い部分が飴色になるまで煮てから砂糖を3回に分けて入れる手順です。「白い部分が飴色になり、よく煮えたら」という目印は、ワタを捨てずに火を通しきることを指しています。薬味に使うときと甘く煮るときで、ワタの扱いが正反対になると覚えておくと迷いません。
種と薄皮は、ジャムを煮るときに戻ってくる
果汁を搾ると、ざるの上に種と薄皮とワタの切れ端が残ります。ここを捨てずに布かお茶パックにまとめて、ジャムやマーマレードを煮るときに一緒に鍋へ入れる作り方が広く使われています。種のまわりにぬめりが出るため、砂糖だけで煮たときよりもとろみがつきやすくなります。煮上がったら取り出して捨てます。
搾る日と煮る日が別になるなら、種と薄皮だけを小さな袋に入れて冷凍しておけば、次にゆずが集まったときに使えます。
ゆず皮の苦味は、どこまで抜けばいいのか
ゆず皮の使い道でつまずく原因は、ほとんどが苦味です。薬味のつもりで多めに入れたら口の中に苦味が残った、ジャムにしたら食べきれない苦さになった、という失敗は下ごしらえの段階で決まっています。
ここで参考になるのが、高知県が公開しているレシピ群です。同じゆず皮を使いながら、作るものによって下ゆでの温度も水にさらす時間も変えています。家庭向けのレシピサイトでは「白い部分を取り除く」の一行で済まされがちな工程が、県の資料では数字で書かれています。
| 作るもの | 下ゆで | 水にさらす | ワタの扱い |
|---|---|---|---|
| 薬味・吸い物 (生のまま) | しない | しない | 削いで落とす |
| ゆず皮の甘煮 (高知県) | 塩を少し加えた湯で 5〜6分 | 3時間程度 (好みで加減) | 残して煮る |
| ゆずみそ (高知県) | ゆでる | 一晩 | 残して煮る |
| 柚子の佃煮 (高知県) | 70℃の湯で15分 | 流水に一昼夜 | 中袋を 除いてから |
| ゆずマーマレード (高知県) | しない | 一晩 | 飴色になるまで 煮る |
削ぐだけで済むのはどんなときか
吸い物に浮かべる、焼き魚に添える、冷奴にのせる。こうした使い方は、皮が口に入る量がごく少ないので、下ゆでも水さらしもしません。ピーラーで黄色い部分だけを薄く削ぎ、白いところが厚く付いていたら包丁で削ぎ落とすだけです。
この場合、苦味の管理は「厚みの管理」と同じ意味になります。削いだ皮を裏返して、白い層が光にすけるくらい薄ければ、そのまま刻んで問題ありません。白い層が2mm以上残っているなら、包丁を寝かせて削ぎ取ります。
ゆでこぼしと水さらしは、どちらが効くのか
高知県の甘煮は、塩を少し加えた湯で5〜6分ゆでてから3時間程度水にさらします。佃煮のほうは、へたと中袋を取り除いた皮を70℃の湯で15分ゆで、そのあと流水に一昼夜浸します。佃煮のほうが濃い味に仕上げるぶん、苦味抜きも徹底している組み立てです。
この2つを並べると、ゆで時間より水にさらす時間のほうが幅が大きいことが分かります。3時間と一昼夜。甘煮のレシピには「さらし加減は好みで加減する」と添えられており、苦味をどこまで残すかは食べる人が決める部分だと県の資料自身が認めています。
- 苦味を残したい……ゆで時間を短く、水さらしを3時間程度で切り上げる
- 苦味を抜きたい……70℃で長めにゆでてから、流水に一昼夜
- 途中で味見する……さらしている皮を1本かじると、残り時間の見当がつく
マーマレードだけ下ゆでをしない理由
高知県のゆずマーマレードは、皮を5cm長さの薄切りにして一晩水にさらすだけで、下ゆでの工程がありません。そのかわり、水を少し加えて煮る段階で白い部分が飴色になるまで火を入れます。煮る時間そのものが長いので、下ゆでを別に立てる必要がない組み立てです。
同じ高知県のゆずジャムは、さらに手順が違います。冷凍した皮をミキサーにかけて裏ごしし、水を足して火にかけ、砂糖を3回に分けて入れて最後にクエン酸を加えます。冷凍してから砕くのは、繊維がゆるんで粉砕しやすくなるためです。皮を冷凍庫に入れておく習慣は、そのまま加工の前処理にもなります。
ゆず皮はどう干せば、季節を越えて使えるのか
ゆずの季節は短く、店頭から消えるのも早い果物です。皮を干しておけば、季節が終わったあとも吸い物やうどんに香りを足せます。検索でも「柚子の皮 乾燥」「柚子皮 乾燥」を調べる人は多いのに、手順の書かれ方はばらついています。
ここでは、数字の出どころがはっきりしているものだけを並べます。東京都台東区が食品ロス削減レシピとして公開しているみかんの皮の乾かし方と、練馬区立リサイクルセンターが干し野菜講座で配っている資料が中心です。台東区の資料には「同様にレモンやゆずなど他の柑橘類でも黄色い部分が使えます」と明記されており、みかんの皮の手順をゆずにそのまま当てはめられます。
| 干し方 | 下ごしらえ | 目安の時間 | 仕上がり | 保存の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 天日・ セミドライ | 薄く削いで 水気を拭く | 2〜3時間 | しんなりして 香りが残る | 密閉して冷蔵、 4〜5日 |
| 天日・ 完全ドライ | 80℃の湯に3分、 水気をよく拭く | 4〜5日 (柑橘の皮は4日) | カリカリに 折れる | 瓶で常温、 約3か月 |
| 室内の 窓際 | 同上 | 公表された 目安はない | 天日より 時間がかかる | 完全に乾けば 天日と同じ |
| オーブン・ 電子レンジ | 同上 | 公的資料に 目安がない | 焦げやすく 香りが飛ぶ | 乾き方しだい |
| 温風乾燥 (受託加工) | 洗浄・カット | 設備と規格で 決める | 均一に仕上がる | 出荷日から 6か月程度 |
干す前に80℃の湯にくぐらせる
台東区の手順は、皮の硬い部分を取り除いたあと、水を沸かして80℃くらいになったら火を止め、皮を入れて3分ほど置くところから始まります。区の資料はこの工程をワックスの除去と説明しています。そのあと水気をペーパーでよく取り、干しに入ります。
加工の現場でも、乾燥の前に短時間の加熱を入れるのは珍しくありません。広島県立総合技術研究所の食品工業技術センターは、乾燥野菜やドライフルーツの製造では乾燥中と乾燥後の褐変や品質劣化を防ぐため、前処理としてブランチング(熱湯や蒸気による短時間加熱)がよく行われると説明しています。家庭の3分のひと手間は、工場でやっていることの小さい版です。
セミドライと完全ドライで、干す時間が10倍以上違う
練馬区立リサイクルセンターの資料は、干し野菜を2つに分けています。セミドライは天日干しで2〜3時間ほど、完全に乾かすドライは天日干しで4〜5日ほどです。同じ「干す」でも、狙う状態によって桁がひとつ変わります。
柑橘の皮については、台東区の手順が「カリカリになるまで天日で4日間」と書いています。練馬区の完全ドライの4〜5日とほぼ重なる数字です。2〜3時間で切り上げたものは香りが残るかわりに水分も残るので、冷蔵庫に入れて4〜5日で使い切る前提になります。
- 数日中に使う……2〜3時間だけ干して、密閉容器で冷蔵
- 季節をまたいで使う……4日前後かけてカリカリにし、瓶で常温保存
- 迷ったら……完全に乾かす。半乾きのまま常温に置くのがいちばん傷みやすい
干す時間帯と、置く場所の選び方
練馬区の資料は、干す場所を「日当たりが良くできるだけ風通しの良い場所」とし、すのこの上、物干し竿に吊るす、室外機の上、ベランダの手すりを例に挙げています。時間帯は、カラッと晴れた湿度の少ない日の昼前から夕方前です。
外に干せない住環境も想定されていて、同じ資料は「外干しができない場合は日の当たる窓際でもOKですが、風通しを良くしましょう」と書いています。窓を閉め切った室内に置くと、乾くより先にこもった湿気で傷みます。ザルや干し網に広げ、重ならないように並べるところまでは共通です。
オーブンと電子レンジは、時間を書いている公的資料がない
「レンジで2分加熱してから干すと早い」「100℃のオーブンで30分」といった書き方は、レシピサイトでよく見かけます。ただ、自治体や公設試験研究機関の資料を探した範囲では、ゆず皮を加熱機器で乾かす時間の目安を示したものは見つかりませんでした。家庭用のオーブンと電子レンジは機種差が大きく、同じ設定でも仕上がりが揃わないためだと考えられます。
加熱で乾かすこと自体が悪いわけではありません。広島県の資料は、熱風乾燥の短所として加熱による成分変化と、収縮・硬化しやすいことを挙げています。裏返せば、低い温度で時間をかけるほど香りは残ります。機器を使うなら、短い時間で区切って何度も様子を見て、焦げる前に止めるのが現実的です。
乾いたかどうかは、折って確かめる
完全に乾いた皮は、指で曲げるとパキッと折れます。曲がるだけで折れないなら、まだ水分が残っています。台東区の資料の「カリカリになるまで」は、この手触りのことです。
保存の考え方は、農林水産省の広報誌が乾物について書いているとおりです。食材に含まれる水分は細菌やカビを増やすが、乾物は水分が抜けているため微生物の繁殖が抑えられ、常温でも数か月保存できる。逆に言えば、水分が中途半端に残っているものを常温に置くと、この条件から外れます。保存中は、高温になりやすいところ、直射日光があたりやすいところ、湿気の多いところを避けます。
家庭の天日干しと、受託加工の温風乾燥は何が違うか
広島県の資料は、食品の乾燥を自然乾燥と人工乾燥に分け、それぞれの長所と短所を並べています。自然乾燥は操作が簡単でコストが低い一方、時間と手間と場所が必要で、天候に左右され品質管理が難しく、均一に仕上がりにくい。熱風乾燥は乾燥速度が速く均一に仕上がり、装置が簡単なためランニングコストが低い。家庭で干すか、設備で乾かすかの違いは、ここに尽きます。
弊社が受けているのも、この熱風(温風)乾燥です。国産のゆずを洗って切り、温風で乾かし、必要に応じて粉砕します。粒度は100メッシュ相当まで細かくでき、粗めに挽いて皮の食感を残すこともできます。乾燥品の賞味期限は出荷日から6か月程度を目安に設定しています。家庭の天日干しで「常温で約3か月」と言われる数字と大きくは離れておらず、乾燥食品の保存期間はおおむねこの範囲に収まります。
弊社の加工では、皮だけを取り分けずに丸ごと粉砕する設計も採ります。カットして種を除くと歩留まりが落ちますが、粉砕が前提なら全量を使えるためです。家庭で「種まで取っておく」のと発想は同じです。取り扱っている規格は乾燥ゆず(柚子)のページにまとめています。
乾かしたゆず皮は、何に使えるのか
干したはいいものの、瓶に入れたまま翌年まで残っている。乾燥ゆず皮でいちばん多い失敗はこれです。乾かす前に、使う先をいくつか決めておくと減りが違います。
七味唐辛子のなかの柑橘は、もともと干した皮
七味唐辛子の配合には、干した柑橘の皮が入っているものが多くあります。台東区の資料も、みかんの皮を干したものを陳皮と呼び、同じようにレモンやゆずなど他の柑橘類でも黄色い部分が使えると説明しています。手元の乾燥ゆず皮を細かく刻んで、唐辛子・ごま・青のりなどと合わせれば、自家配合の七味になります。
配合の考え方や原料の組み合わせについては、七味OEMの始め方で製造側の視点から整理しています。家庭で作るときも、香りの立たせ方は家庭でも変わりません。
粉にすると、入れられる料理が増える
カリカリに乾いた皮は、すり鉢やミルで粉にできます。粉にすると、刻んだ状態では入れにくかった料理にも回せます。塩に混ぜてゆず塩にする、ドレッシングに振る、クッキー生地に混ぜる、といった具合です。
- 塩や砂糖に混ぜる……粒が細かいほど均一に混ざる
- 生地に練り込む……焼き菓子やパンに。刻んだ皮より口当たりが軽い
- 飲み物に落とす……紅茶や白湯に少量
- たれ・ドレッシングに……油と合わせると香りが立つ
粒度による使い分けは、業務用の柑橘素材でも同じ考え方をします。粗さの違いが用途をどう分けるかは柑橘パウダーの製法と用途でまとめています。
戻して使うときは、水に浸す
完全に乾いた皮は硬いので、煮物や漬物に厚みのある状態で使いたいときは水で戻します。乾物全般と同じで、水やぬるま湯に浸けて柔らかくしてから調理に入ります。戻し汁にも香りが移るので、捨てずに煮汁に足せます。
吸い物やうどんに散らすなら、戻さず乾いたまま入れて構いません。熱い汁の中で自然にほどけ、香りが立ちます。戻す・戻さないを使い分けるのが、乾燥ゆず皮を減らす近道です。
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ゆずの果汁は、どう使い切るのが早いか
皮の話ばかりが先に立ちますが、量でいえば果汁のほうが余ります。ゆずを何個も搾ると、思ったより早くボトルが埋まります。搾ったあとの行き先を先に決めておくと、冷蔵庫の奥で酸っぱいまま忘れられることがありません。
ポン酢はしょうゆ3・果汁2・みりん1から
徳島県つるぎ町が公開しているゆずポン酢は、しょうゆ・ゆずの絞り汁・みりんを3対2対1の比率で混ぜるだけです。酸味を柔らかくしたいときは4対2対1くらいにする、と町の資料に添えられています。加熱も熟成も指定されていません。
保存については、そのまま瓶に入れて冷蔵庫へ入れ、冷蔵庫で2か月くらいは持つと書かれています。そのうえで「その都度作り立てをいただいても美味しいです」と続きます。作り置きも、使う分だけ都度混ぜるのも、どちらでも成り立つ調味料です。
合わせ酢にすると、寿司飯まで使える
高知県の資料では、ゆずの果汁を「ゆず酢」と呼んでいます。食酢の代わりに使う前提の呼び方です。つるぎ町のゆず寿司は、ゆず酢大さじ5、砂糖大さじ3、塩小さじ2を合わせ酢にして、炊いたご飯にまんべんなくふりかけてうちわであおぎながら混ぜます。
米3カップぶんの寿司飯に大さじ5。ゆずを数個搾れば届きます。酢の物やマリネも、米酢の一部をゆず果汁に置き換えるだけで香りが変わります。
製氷皿で凍らせて、小分けにしておく
一度に使い切れない果汁は、製氷皿やシリコンカップに入れて凍らせ、固まったら袋にまとめます。1個ぶんが小さじ数杯になるので、必要な分だけ取り出せます。焼き魚に1個、たれに2個という使い方ができ、ボトルで持つより減りが早くなります。
冷凍した果汁をどのくらい置けるかは、資料によって1か月程度とするものから3か月とするものまで幅があります。公的な目安が見あたらないため、期限を決め打ちするより、香りが落ちる前に使い切る前提で量を分けたほうが確実です。
飲み物に回すと、まとまった量が減る
果汁が大量に残っているなら、飲み物に回すのがいちばん量をさばけます。皮を薄く1枚浮かべると香りが立ちます。
- 炭酸割り……果汁を大さじ1〜2、甘みははちみつか砂糖で調整
- 湯割り……寒い日に。皮をひとかけら浮かべる
- ドレッシング……油と塩と合わせるだけ。レモンの代わりに
- 下味……鶏や白身魚にふって、臭みを抑える
皮を煮る・漬けるときの砂糖はどれくらい入れるのか
ゆずが一度に大量に手に入ったときは、煮るか砂糖に漬けるのが確実です。砂糖をどれだけ入れるかで仕上がりも日持ちも変わりますが、ここも高知県が公開しているレシピが基準になります。同じゆず皮を使いながら、甘煮・佃煮・みそ・マーマレード・ジャムで配合がはっきり違います。
| 作るもの | ゆず皮 | 砂糖 | 合わせるもの |
|---|---|---|---|
| ゆず皮の甘煮 | 300g | 90〜100g | 薄口しょうゆ・みりん 各大さじ1と1/2、 赤唐辛子1本 |
| 柚子の佃煮 | 1kg (苦み抜き後) | 400g | 濃口醤油400cc、 唐辛子2本 |
| ゆずみそ | 250g | きざら50g+ 白砂糖50g | 味噌500g、 ゆず酢大さじ1 |
| ゆず マーマレード | 1kg | 600g | ゆず酢200cc |
| ゆずジャム | 1kg | 900g | 水飴100g、水500cc、 クエン酸10g |
甘煮は皮の3分の1が砂糖
高知県のゆず皮の甘煮は、皮300gに対して砂糖90〜100g、薄口しょうゆとみりんが各大さじ1と1/2、輪切りの赤唐辛子が1本です。塩を少し加えた湯で5〜6分ゆで、3時間程度水にさらした皮を好みの形に切り、調味料と唐辛子を加えて中火で水分が少し残る程度に煮詰めます。
砂糖が皮の3分の1ほどなので、ジャムに比べるとずっと甘さが軽く、しょうゆと唐辛子が入るぶんおかず寄りに仕上がります。ご飯に添える、酒の肴にする、刻んで和え物に混ぜる、といった使い方が向きます。
佃煮は醤油と砂糖が同量
柚子の佃煮は、苦み抜きをした皮1kgに、濃口醤油400cc、砂糖400g、唐辛子2本という配合です。へたと中袋を除いた皮を70℃の湯で15分ゆで、流水に一昼夜浸すのが下ごしらえにあたります。
煮方にも順番があります。皮を1cmの短冊に切り、醤油は全量、砂糖は3分の1だけ加えて煮始め、20分ほどで沸き上がってきたら残りの砂糖を2回に分けて入れて煮詰めます。唐辛子は種を除いて小さく切り、最後に入れます。砂糖を分けて入れるのは、マーマレードやジャムと共通する手つきです。
ゆずみそは皮より味噌のほうが多い
高知県の郷土料理として公開されているゆずみそは、ゆず皮250gに対して味噌500g、きざら(粗糖)50gと白砂糖50g、ゆず酢大さじ1です。皮をゆでて一晩水にさらして薄く切り、きざらと一緒に弱火で煮て、味噌を加えて混ぜながら煮詰め、最後にゆず酢を混ぜて火を止めます。
県の資料には「和え物の調味や焼き魚につけたりご飯につけたりといろいろ利用できる」と添えられています。皮の量が控えめで味噌が主体なので、保存食というより常備の調味料として扱う位置づけです。徳島県つるぎ町のさばのゆずみそかけでは、白みそ120gに赤みそ30gを合わせ、最後にゆずの表皮をこすって混ぜる作り方が紹介されています。
マーマレードとジャムは、砂糖の量が段違い
ゆずマーマレードは皮1kgに砂糖600g、ゆず酢200cc。ゆずジャムは皮1kgに砂糖900g、水飴100g、水500cc、クエン酸10gです。同じ県の同じ資料に並んでいながら、砂糖の量が1.5倍違います。
違いは作り方に出ます。マーマレードは皮の形を残して煮るので、皮そのものの水分と苦味が残ります。ジャムは冷凍した皮をミキサーにかけて裏ごしするため、全体が均一になり、砂糖と水飴で甘さを立てる設計です。皮の形を残したいのか、塗りやすさを取るのかで選びます。
ゆず茶は氷砂糖と同量、上を砂糖で終える
煮るのが面倒なときは、砂糖に漬けるだけの方法があります。火を使わないぶん失敗が少なく、皮も果肉もまとめて片づきます。
栃木県農政部の職員ブログが紹介しているゆず茶の作り方は、材料がゆず・氷砂糖・大きめの空き瓶の3つだけです。ゆずをよく洗って縦横4分の1に切り、皮と中身をばらばらにしてへたと種を取り、皮を細かく刻みます。へたと種以外は全部使います。
ゆずと同量の氷砂糖を用意し、瓶にゆずと氷砂糖を数回に分けて詰めていきます。いちばん上が氷砂糖になるようにするのがコツで、氷砂糖が多すぎると溶け残るとも書かれています。冷蔵庫に置いて、最初の数日は瓶を振ってよく混ぜ、砂糖を溶かします。
同じ資料によると、エキスが出てジャム状になり、およそ半月から1か月で飲み頃になります。保管は冷蔵庫で春まで大丈夫、とされています。刻む作業さえ終われば、あとは瓶に詰めて置いておくだけです。
ゆずピールは、砂糖を含ませてから乾かす
皮を砂糖で煮てから乾かすと、ゆずピールになります。ゆでこぼして水にさらして苦味を抜き、砂糖を含ませて汁気がなくなるまで煮て、細く切ってから水分を飛ばす、という流れです。高知県の甘煮を細く切って、さらに乾かしたものと考えると分かりやすくなります。
仕上げの乾かし方は、天日でも加熱機器でも構いません。表面が少し湿っているくらいで止めると、噛んだときに皮の柔らかさが残ります。完全に乾かすと日持ちは延びますが、食感は硬くなります。
生のまま・冷凍で使うときに気をつけること
干す時間も煮る時間もないときは、切って凍らせるだけでも十分です。冷凍したゆずは、生のときとは違う使い方に向きます。
丸ごと凍らせるか、刻んで小分けにするか
丸ごと凍らせたゆずは、凍ったまま皮をむいたりすりおろしたりできます。果肉がしっかりしているので、生のときより皮が扱いやすくなります。少し室温に置いて半解凍にすれば、包丁を入れて果汁を搾ることもできます。ただし一度解けたものを凍らせ直すことはできないので、1個を使い切る予定があるときの方法です。
少しずつ使うなら、最初から皮と果汁に分けます。削いだ皮を千切りやみじんにして、1回分ずつラップに包んでから袋にまとめます。使うときは包みを1つ取り出すだけなので、凍った塊を割る手間がありません。高知県のゆずジャムが冷凍した皮を前提にしているように、冷凍はそのまま加工の下準備にもなります。
冷凍した皮は、香りが少しずつ抜けていきます。香りを前に出したい料理には新しいものを、煮込みや練り込みには冷凍のものを、と回す順番を決めておくと在庫が動きます。
飾り切りは、皮が余っているときにこそ試せる
和食では、皮を松葉の形に切ったり、へぎ柚子として薄く切って椀に添えたりします。形を整えるぶん皮が余るので、ふだんは避けがちな手間ですが、大量にゆずがある日なら気兼ねなく試せます。切り落とした端は刻んで薬味に回せば、無駄になりません。
徳島県つるぎ町のえびいもの煮びたしは、器に盛ってだし汁をかけ、ゆずの細切りを散らす仕上げです。飾りといっても、香りを最後に足すための工程でもあります。食べる直前に散らすと香りが立ちます。
料理以外に、ゆずはどう使われてきたか
ゆずの使い道を探していると、風呂や掃除の話が必ず出てきます。ここでは風習と手順として整理します。
冬至のゆず湯は、江戸時代の語呂合わせから始まった
京都市が運営する「京都をつなぐ無形文化遺産」は、冬至を1年で最も日が短くて夜が長い日と説明したうえで、この日を陰の極点としてふたたび陽が増していくという考え方があり、無病息災を祈り邪気を祓うための習わしが生まれたと書いています。ゆずを浮かべた風呂に入るのも、その習わしのひとつです。
同じ資料は、江戸時代に「冬至」と「湯治」、「ゆず」と「融通」をかけた言葉あそびから、銭湯の客寄せとして始まったとされる、とも記しています。神事として始まったのではなく、商いの工夫として広まったという来歴です。
丸ごと浮かべるか、皮を袋に入れるか
丸ごと浮かべるのがいちばん簡単で、後始末も拾い上げるだけです。果汁を搾ったあとの皮が残っているなら、洗濯ネットや木綿の袋に入れて湯に沈める方法もあります。刻んだ皮をそのまま入れると排水口に詰まるので、袋に入れるのが前提です。
- 丸ごと……数個をそのまま浮かべる。切れ目は入れなくてよい
- 半割り……香りは出やすいが、果肉と種が散る
- 皮だけ……袋に入れて沈める。搾ったあとの皮の行き先になる
- あとかた付け……追い焚きや循環式の風呂では、取扱説明書の指示を確認する
肌の弱い人や小さな子どもと入るときは、量を控えるか短時間にとどめます。皮膚に刺激を感じたら使うのをやめてください。
皮を煮出した汁で、油汚れを拭く
柑橘の皮を水から煮出した汁で、コンロまわりやシンクを拭く使い方は昔から知られています。搾りかすの皮をそのまま鍋に入れて10分ほど煮て、冷ましてから布に含ませます。強い汚れが落ちるわけではないので、洗剤の代わりというより、仕上げ拭きの位置づけです。
塗装面や樹脂の部分は、目立たないところで試してから使います。煮出した汁は日持ちしないので、その日のうちに使い切ります。
完全に乾かした皮なら、通気性のある布袋に入れて玄関や靴箱に置くこともできます。香りは数週間で落ちていくので、干した皮の一部を回すくらいの使い方が続きます。半乾きのものを袋に入れると傷むため、必ず折れるまで乾かしたものを使い、湿気の多い場所は避けます。
ゆずが大量に届いた日は、どの順番で手をつけるか
ゆずは一度にまとまって届きます。1個ずつ考えていると傷みが先に来るので、順番を決めてから手をつけます。
先に押さえておきたいのは、干す工程がいちばん天気に左右されるという点です。練馬区の資料が示すとおり、天日干しはカラッと晴れた湿度の少ない日の昼前から夕方前が適します。晴れている日なら、干す作業を最初に持ってきます。
| 順番 | やること | 目安 | 行き先 |
|---|---|---|---|
| 1 | 全部洗って 水気を拭く | 30分 | ざるに広げる |
| 2 | 干す分の皮を削ぎ、 80℃の湯に3分 | 30分 | ざる・干し網 (昼前から) |
| 3 | 残りを半分に切って 果汁を搾る | 1時間 | 瓶と製氷皿 |
| 4 | 種と薄皮を より分ける | 15分 | 袋に入れて冷凍 |
| 5 | 煮る分の皮を 下ゆでして水にさらす | 3時間〜一晩 | ボウルで 水に浸けたまま |
| 6 | 残った皮を刻んで 小分け冷凍 | 30分 | 冷凍庫 |
| 7 | 翌日、さらした皮を 煮る | 1〜2時間 | 瓶に詰めて冷蔵 |
干すものと煮るものを、先に分ける
用途がばらけても、洗う作業は共通です。最初に全部洗って水気を拭いてしまえば、あとの工程で手が止まりません。水気が残っていると、干すときも凍らせるときも傷みのもとになります。台東区の手順でも、湯にくぐらせたあと「水気をペーパーでよく取り」と念を押しています。
洗い終えたら、干す皮は黄色い部分だけを薄く削ぎます。煮る皮は白いワタを残したまま使います。同じ皮でも取り方が逆なので、最初に「何個を干す用、何個を煮る用」と決めてから包丁を入れます。
干す用は保存したい量から逆算します。乾くと体積が大きく減り、生の皮がざる1枚分でも小さな瓶1つに収まるので、多くの家庭では数個ぶんで足ります。
水にさらす工程は、寝ている間に進む
高知県の佃煮が「流水に一昼夜」、ゆずみそとマーマレードが「一晩」としているように、苦味抜きは時間がかかる工程です。ここを夜にかけてしまえば、拘束される時間は実質ゼロになります。
2日に分ける前提で組むと、初日は洗う・削ぐ・搾る・干し始める・水にさらす、翌日は煮る、という配分になります。1日で全部やろうとすると、煮詰める時間が夜中に食い込みます。
量が多すぎるときは、加工に回す選択もある
家庭でさばける量を超えてゆずが集まる場面は、産地や直売所では珍しくありません。規格外で出荷できないものが、毎年まとまって出ます。
弊社では、そうした国産の果実を温風乾燥と粉砕で受けています。カット形状や粒度の指定にも対応し、10g以上であれば小袋への充填まで行います。フリーズドライや焙煎は扱っていません。産地での取り組みや商品にするまでの流れはゆず商品開発の進め方にまとめています。
ゆずそのものの産地や品種については国産ゆずの産地別の特徴、収穫の時期と見極め方はゆずの収穫時期、青ゆずと黄ゆずの使い分けはゆずの種類と使い方で扱っています。
FOR BUSINESS
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国産のゆずを乾燥・粉砕してお出ししています。カット形状や粒度の指定、継続してのお取引もご相談ください。規格は 乾燥ゆず・柚子パウダー に掲載しています。
よくある質問
まとめ
ゆずは、出荷量の8割が加工向けに回る果実です。搾る・煮る・干すを前提に流通している果物なので、家庭でも同じ順番で手を動かすと早く片づきます。
皮は黄色い部分だけを薄く削げば下ごしらえなしで薬味になり、ワタごと使うなら高知県のレシピが示すとおり下ゆでと水さらしが要ります。甘煮は塩を少し加えた湯で5〜6分ゆでて3時間程度、佃煮は70℃で15分ゆでて流水に一昼夜。どこまで苦味を残すかは、さらす時間で決まります。
干すなら、皮を80℃の湯に3分くぐらせて水気を拭き、セミドライなら2〜3時間、カリカリまで乾かすなら4日前後です。完全に乾かしたものは瓶で常温3か月ほど、半乾きのものは冷蔵で4〜5日。折って確かめて、曲がるだけなら干し足りません。
果汁はポン酢ならしょうゆ3・果汁2・みりん1、寿司飯なら米3カップにゆず酢大さじ5。残りは製氷皿で凍らせておけば、1個ずつ取り出せます。種と薄皮は捨てずに袋へ入れて冷凍し、ジャムを煮る日に鍋へ戻します。
冬至のゆず湯は、江戸時代の言葉あそびから銭湯の客寄せとして広まったとされる風習です。丸ごと浮かべるか、搾ったあとの皮を袋に入れて沈めるか。料理で使いきれなかったぶんの行き先が、ここにもあります。
