カゴメが40回の試作で完成させた「オレンジ不使用のオレンジジュース」——新ブランド KAGOME Beyond 全国発売
カゴメ株式会社は2026年3月10日、オレンジ果汁を一切使わずにオレンジジュースの味わいを再現した野菜・果実100%ジュース「Beyond オレンジを使っていない*オレンジ味の100%ジュース」を全国のコンビニ・スーパーで発売した。新ブランド「KAGOME Beyond(カゴメ ビヨンド)」の第一弾商品で、約2年・40パターンの試作を経て商品化に至った。世界的なオレンジ果汁の供給不安と価格高騰を背景に、カゴメ独自のブレンド技術で開発された。
起点ニュース:KAGOME Beyond 第一弾の詳細
カゴメが新設したブランド「KAGOME Beyond」は、同社が長年培ってきた野菜・果実のブレンド技術を活かし、従来の常識を超える商品を提案するラインだ。その第一弾となる本商品は、ニュージーランド産の黄にんじんをベースに、りんごで甘みを、パインアップルでトロピカルな香りを加え、さらにレモンとマンゴーの濃縮果汁を配合。オレンジ特有の濁りと風味を、オレンジ以外の素材だけで再現した。
開発期間は約2年。世界各地から素材を選定し、約40パターンの試作を重ねた。社内の評価会議では飲みやすさと味わいの再現性が高く評価され、商品化が決定した。容量195ml・紙容器入りで、店頭想定価格は約140円(税込)。
背景:世界を揺るがすオレンジ果汁の供給危機
本商品の開発を後押ししたのは、世界的なオレンジ果汁の供給不足だ。日本はオレンジ果汁の9割以上を輸入に依存しており、その約7割がブラジル産。そのブラジルでは干ばつとカンキツグリーニング病(HLB)の影響で不作が続き、果汁の製造量が毎年低水準にとどまっている。
米国フロリダ州でも同じカンキツグリーニング病が猛威を振るい、20年にわたって生産量が大幅に減少。オレンジジュースの国際先物価格は2022年頃から急騰し、ピーク時には1ポンド550セント超と、数年で5倍以上に跳ね上がった。日本国内でもオレンジジュース1,000ml入りの平均価格が391円(2025年11月時点)に達し、一部メーカーが販売休止に追い込まれる事態となっていた。
こうした状況下で、カゴメのマーケティング本部・藤澤明祐氏は「オレンジジュースが身近でなくなるかもしれないという危機感から、自社のブレンド技術で解決策を提示したかった」と開発動機を語っている。
データで見る:オレンジ果汁の供給危機と代替ジュースの比較
| 項目 | 従来のオレンジジュース | Beyond(カゴメ) |
|---|---|---|
| オレンジ果汁 | 使用(100%) | 不使用 |
| 主原料 | ブラジル・米国産オレンジ | NZ産黄にんじん、りんご、パインアップル |
| 果汁・野菜汁比率 | 果実100% | 野菜・果実100% |
| 店頭価格帯(195ml換算) | 約160円〜(2025年時点で上昇中) | 約140円 |
| 供給リスク | 高(ブラジル・フロリダ依存) | 低(複数産地の素材をブレンド) |
| アレルギー表示 | オレンジ | りんご(オレンジなし) |
| 年 | オレンジ果汁先物価格(米セント/ポンド) | 動向 |
|---|---|---|
| 2021年 | 約100 | 安定水準 |
| 2023年 | 約300 | ブラジル干ばつで急騰 |
| 2024年 | 約500 | フロリダ減産が追い打ち |
| 2024年12月 | 550超 | 過去最高値圏 |
| 2025年後半 | 約270(半値に急落) | 投機筋の売りで調整 |
業界・消費者の反応
飲料業界の動き:オレンジ果汁の高騰を受け、国内飲料メーカーの間では「脱オレンジ」の動きが加速している。一部メーカーはオレンジジュースの販売を休止し、代わりにりんごやぶどうなど国内調達が可能な果汁飲料へシフト。カゴメのBeyondは、完全な代替ではなく「オレンジの味を別素材で再現する」という新たなアプローチとして注目を集めている。
消費者の評価:口コミサイトでは発売直後から評価が集まり、7点満点中4.4点と比較的高い評価を獲得。「言われなければオレンジジュースと区別がつかない」「にんじんベースとは思えない」といった驚きの声が上がる一方、「やはり本物のオレンジとは微妙に違う」という意見も見られる。
食品OEM業界の関心:カゴメのブレンド技術は、PB商品や外食向けドリンクの原料調達に悩む企業にとっても示唆が大きい。特定の果汁に依存しない処方設計は、原料価格の変動リスクを抑える手法として、OEMメーカーの間でも関心が高まっている。乳清を活用した桃ジェラートの事例と同様に、副産物や代替素材を活かした商品開発は食品業界全体のトレンドになりつつある。
読者への影響:食品業界・農業関係者が注目すべきポイント
本商品が示すのは、原料の供給リスクに対してブレンド技術で対応するという戦略の実用性だ。食品加工業者やOEMメーカーにとって、単一原料への依存はコスト変動の直撃を受けるリスクがある。カゴメのように複数産地・複数素材の組み合わせで味を設計するアプローチは、リスク分散の具体例として参考になる。
農業関係者にとっては、黄にんじんのような「主役になりにくい素材」が飲料原料として脚光を浴びた点が興味深い。国内でも規格外野菜や地域特産の果実を飲料原料として提案する余地は大きく、規格外みかんのアップサイクル事例のように、従来は廃棄・低価格出荷されていた素材の価値を引き上げる動きと連動している。
業界への波及:「代替飲料」市場の拡大と食品OEMへの影響
代替乳(オーツミルク・アーモンドミルク)に続き、代替果汁という新たなカテゴリーが立ち上がった意義は大きい。カゴメが「KAGOME Beyond」をブランドとして展開する姿勢は、今後オレンジ以外の果汁——グレープフルーツやレモンなど——でも同様の代替商品が登場する可能性を示唆している。
食品OEM業界にとっては、特定果汁の調達難に対する処方開発の新たな方向性が示された。飲料だけでなく、ゼリー・グミ・アイスなどの加工食品でもオレンジフレーバーの代替ニーズは存在する。籾殻を食品素材に転換する事例と共通するのは、「なければ作る」という発想で新たな原料ソースを開拓する動きだ。
また、原料産地の多角化はサプライチェーンの安定性にも直結する。ブラジル一極集中のリスクが顕在化した今、ニュージーランド・国内・東南アジアなど複数地域からの調達を前提とした商品設計が、飲料業界全体で加速する可能性がある。
商品・実用情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 商品名 | Beyond オレンジを使っていない*オレンジ味の100%ジュース |
| ブランド | KAGOME Beyond(カゴメ ビヨンド) |
| 発売日 | 2026年3月10日 |
| 容量 | 195ml(紙容器) |
| 店頭想定価格 | 約140円(税込) |
| 販売チャネル | 全国のコンビニ・スーパー |
| 主原料 | 濃縮にんじん(NZ産)、りんご、パインアップル、レモン、マンゴー |
| アレルゲン | りんご ※オレンジアレルギー対応商品ではない |
| 賞味期限 | 9ヶ月(未開封時) |
| 製造者 | カゴメ株式会社(愛知県名古屋市) |
| ブランドサイト | KAGOME Beyond 公式 |
| お客様相談センター | 0120-401-831(土日祝を除く) |
まとめ
カゴメの「KAGOME Beyond」は、世界的なオレンジ果汁の供給危機という課題に対し、独自のブレンド技術で正面から応えた商品だ。約2年・40パターンの試作から生まれた「オレンジを使わないオレンジジュース」は、代替飲料の新カテゴリーを切り開くと同時に、原料調達リスクへの実践的な解決策を食品業界全体に提示している。
