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ゆずの産地は高知が半分を占め、二位は徳島から愛媛に変わった

この記事の要約
令和5年産の農林水産省統計から、ゆずの都道府県別収穫量を並べ直しました。高知が15,004.5トンで全国の53.3%を占め、二位は愛媛、三位は徳島です。産地ごとの市町村と成り立ち、出荷量の80.5%が加工向けであること、青ゆず黄ゆずの出回り時期までまとめています。

「ゆずの産地はどこか」と調べると、たいていのページが「高知県が日本一」で止まります。では二位はどこで、三位との差はどれくらいあるのか。数字を並べたページを探すと、今度は年次がばらばらで、二位が愛媛だったり徳島だったりします。

この記事は、農林水産省の特産果樹生産動態等調査の公表データ(令和5年産、2026年3月18日公開)を直接開いて、都道府県別の栽培面積・収穫量・出荷量・加工向け出荷量を並べ直したものです。加えて、同じ調査の長期累年統計に残る昭和9年産からの記録をたどり、ゆずの主産地がどう入れ替わってきたかも整理しました。

産地ごとの成り立ちについては、地理的表示(GI)の登録情報、自治体、JAの公表資料にあたっています。ゆずを食材として選ぶ方にも、加工原料として調達する方にも、判断のもとになる数字が手元に残るように書きました。

目次

ゆずの収穫量は全国で2万8千トン、その半分が高知県から出ている

令和5年産の全国のゆず収穫量は28,143.5トン、栽培面積は2,228.6ヘクタール、出荷量は26,734.8トンでした。出荷量のうち加工向けは21,519.9トンで、出荷量の80.5%にあたります。ゆずは生果でそのまま売られる量より、果汁やペーストなどの原料に回る量のほうがはるかに多い果実です。

都道府県別のゆず収穫量ランキング(令和5年産)

収穫量の多い順に上位20県を並べました。シェアは全国収穫量28,143.5トンに対する割合です。滋賀県と岡山県は栽培面積の報告はあるものの収穫量が秘匿扱いのため、順位には含めていません。

順位都道府県栽培面積
(ha)
収穫量
(t)
全国
シェア
1高知894.815,004.553.3%
2愛媛270.84,472.715.9%
3徳島294.82,720.59.7%
4鹿児島97.81,281.44.6%
5大分152.21,143.84.1%
6宮崎155.1951.73.4%
7熊本47.6460.11.6%
8和歌山36.5437.01.6%
9山口24.7377.41.3%
10島根24.5242.60.9%
11埼玉22.2217.40.8%
12京都13.0140.10.5%
13福岡29.1116.60.4%
14兵庫18.2112.90.4%
15山梨26.584.00.3%
16静岡5.652.90.2%
17広島7.242.90.2%
18栃木4.239.50.1%
19茨城5.239.20.1%
20奈良6.725.00.1%
-全国2,228.628,143.5100%
農林水産省「令和5年産特産果樹生産動態等調査」種類別栽培状況(都道府県)より作成。シェアは全国収穫量に対する割合として算出。

上位3県で国内の8割近く、上位6県で9割を超える

高知・愛媛・徳島の四国3県を足すと22,197.7トン、全国の78.9%になります。ここに鹿児島・大分・宮崎の九州3県を加えた6県で25,574.6トン、90.9%です。七位の熊本以下は全部合わせても全国の1割に届きません。ゆずは産地の集中度がきわめて高い果実だと、この一行でわかります。

ゆずの収穫量を報告している都道府県は37。北海道と東北の大部分、北陸の一部には産地がありません。一方で岩手県の陸前高田市・大船渡市、宮城県の柴田町・丸森町のように、三陸沿岸にも小さな産地が残っています。

栽培面積の順位は収穫量の順位と一致しない

表を横に見ると、二位と三位で面積と収穫量の順序が逆になっています。徳島県の栽培面積は294.8ヘクタールで愛媛県の270.8ヘクタールより広いのに、収穫量は徳島2,720.5トンに対し愛媛4,472.7トンと、愛媛が1.6倍を出しています。面積の広さがそのまま収穫量の順位にならないのがゆずの特徴です。

宮崎県と大分県も同じです。宮崎155.1ヘクタール・951.7トン、大分152.2ヘクタール・1,143.8トンで、面積はほぼ同じなのに収穫量は大分が2割多い。産地を面積で語ると実態からずれます。

この数字はどの統計から取ったのか

ゆずの都道府県別データを載せている統計は、農林水産省の「特産果樹生産動態等調査」です。うんしゅうみかんやりんごの数字が載る「果樹生産出荷統計(作況調査)」とは別の調査で、ゆず・すだち・かぼすといった香酸柑橘はこちらに入ります。まとめ記事のなかには調査名を取り違えているものがあるので、出典を確かめるときの目印にしてください。

もうひとつ、この調査には収穫量・出荷量・加工向け出荷量の三つが並んでいます。「生産量」という言葉で紹介されている数字がどれを指しているかで、産地の順位も規模感も変わります。この記事では収穫量を基準にそろえ、出荷量と加工向けは別の表で扱います。

高知県が全国の半分を占めるまでに何があったのか

高知県のゆずは15,004.5トン。二位の愛媛県の3.4倍、三位の徳島県の5.5倍です。この差は一朝一夕についたものではなく、江戸末期の記録から戦後の産地化、そして栽培技術の転換という順番でできています。

江戸末期の記録から戦後の産地化まで

JA高知県の紹介によると、安政4年(1857年)に安芸奉行所が管轄下の村落にゆずを作らせた記録があり、江戸末期にはすでに栽培されていたことがわかっています。ただし当時のゆずは自家用や薬用の域を出ません。中山間地帯で本格的な栽培が始まったのは戦後です。

統計にもそれが残っています。長期累年統計で高知県が主産地として初めて名前が出るのは昭和39年産で、収穫量は150トン。当時の首位は埼玉県でした。高知が四桁トンに乗るのは昭和51年産の1,639トンからで、産地として育つまでに十数年かかっています。

接ぎ木の普及が「ゆずの大馬鹿十八年」を縮めた

「桃栗三年柿八年、ゆずの大馬鹿十八年」という言い回しがあります。北川村の公表資料も引いているこの言葉は、種から育てたゆずが実をつけるまでの長さを指しています。埼玉県毛呂山町の資料では、実生のゆずは結実まで15〜18年かかるのに対し、接ぎ木なら3〜5年で実がつくと説明されています。

北川村の資料は、昭和40年頃に接ぎ木による栽培方法が考案されて収穫までの期間が短くなり、高知県でも産地化が進んだと記しています。植えてから15年待つ作物と、5年で採れる作物では、新しく手を挙げる農家の数が変わります。高知の伸びが昭和40年代後半から急になるのは、この転換と時期が重なります。

安芸市・北川村・香美市という三つの軸

令和5年産の調査で高知県の主な産地として挙がっているのは、安芸市・北川村・香美市の3市町村です。いずれも県東部から中部の山あいに位置します。JA高知県はこのほかに幡多地区、土長地区を産地として挙げており、県内の広い範囲でゆずが作られていることがわかります。

高知県の栽培面積894.8ヘクタールは、二位の徳島県294.8ヘクタールの3倍です。1ヘクタール当たりの収穫量に直すと16.8トンで、愛媛の16.5トンとほぼ並び、全国平均の12.6トンを4トン上回っています。面積が広いうえに、単位面積あたりでも多く採れている。この二重構造が53%というシェアの中身です。

香美市の物部ゆずは青果に振り切った産地

高知県香美市の「物部ゆず」は、令和2年6月29日に地理的表示(GI)第96号として登録されています。登録情報には、キズが少なく外観が美しい、棚持ちの良い青果用に特化したゆずであること、青果率が平成29年時点で69%と全国平均の18%を大きく上回ることが記されています。

理由として挙げられているのは気象条件です。年平均気温は約15℃で降水量が多く、水はけの良い樹園地が多い。加えて、出荷の9割以上を占める黄玉が着色する10月以降の気温が低いことが、果実の鮮やかな黄色を引き出すとされています。同じ高知県のなかでも、加工向けに回す産地と青果で売る産地に分かれている、という見方が数字から取れます。

2位は愛媛県、3位は徳島県に入れ替わっている

「ゆずの生産量は高知、徳島、愛媛の順」と書いているページは今も多く残っています。これは数年前までの順位です。長期累年統計をたどると、二位と三位は一度きりではなく何度か入れ替わっています。

愛媛が徳島を上回ったのは令和元年産が最初

長期累年統計の主産県欄を年ごとに追うと、愛媛県が徳島県を上回ったのは令和元年産(愛媛2,732トン、徳島2,574トン)が最初です。ただしその後、令和2年産と令和3年産は徳島が再び上回りました。令和4年産で愛媛1,970トン・徳島1,819トンと再逆転し、令和5年産では愛媛4,472.7トン・徳島2,720.5トンと差が開いています。

「愛媛が二位になった」と一度で言い切れる年はありません。四年のあいだに三度入れ替わった、というのが統計の読み方です。順位を書いているページの年次を確かめたほうがいい理由がここにあります。

愛媛のゆずは鬼北町に集まっている

令和5年産で愛媛県の主な産地に挙がっているのは、鬼北町・西予市・松野町です。いずれも県南西部の南予地域で、四国山地の内陸にあたります。鬼北町は自らを「ゆずの里」と呼んでおり、公表資料では寒暖の差が激しい気候が香りの強い良質なゆず栽培に適していると説明しています。化学肥料や農薬を使わない特別栽培への取り組みにも触れています。

愛媛県の加工向け出荷量は4,116.9トンで、出荷量の94.6%にあたります。高知県の79.7%より高く、採れたゆずのほとんどが果汁や加工原料に向かっている産地です。

面積あたりの収穫量で1.8倍の差がついている

収穫量を栽培面積で割った値を主な産地について計算しました。ゆずは年によって実のつき方が大きく振れる果樹なので、単年の数字は目安として見てください。

都道府県栽培面積
(ha)
収穫量
(t)
1ha当たり
収穫量(t)
高知894.815,004.516.8
愛媛270.84,472.716.5
山口24.7377.415.3
鹿児島97.81,281.413.1
和歌山36.5437.012.0
京都13.0140.110.8
島根24.5242.69.9
埼玉22.2217.49.8
熊本47.6460.19.7
徳島294.82,720.59.2
大分152.21,143.87.5
宮崎155.1951.76.1
全国2,228.628,143.512.6
農林水産省「令和5年産特産果樹生産動態等調査」の栽培面積と収穫量から算出。1ha当たり収穫量は小数第2位を四捨五入。

高知の16.8トンは徳島の9.2トンの1.8倍、宮崎の6.1トンとは2.7倍の開きがあります。徳島は全国平均12.6トンを下回っており、面積が二位でも収穫量が三位になる理由はここにあります。樹の年齢構成、傾斜地の度合い、収穫にどれだけ人手をかけられるかで、同じ面積からの収穫量は変わります。

徳島の木頭ゆずは那賀町の旧木頭村から始まった

徳島県の主な産地は那賀町・上勝町・つるぎ町です。このうち那賀町の「木頭ゆず」は、平成29年9月15日に地理的表示第42号として登録されています。徳島県内では初めてのGI登録産品で、登録時点では全国で42番目の産品でした。

登録情報には産地形成の経緯がはっきり書かれています。旧木頭村では古くからゆずが植えられていたものの、昭和35年に大阪中央市場に出荷して高い評価を受けたことをきっかけに本格的な生産が始まった、というものです。徳島県の農業支援センターの資料では、木頭ゆずの栽培面積は166ヘクタールとされ、県内では最大の産地になっています。

木頭ゆずのGI登録情報は、産地の地理的な条件を二点挙げています。標高が高く冷涼なため果実の色合いが良いこと。そして夏期の降雨量が徳島市の2.5倍以上と多雨であり、夏期の乾燥が原因となる「かいよう性コハン症」の発生が軽減されること。この二つです。

特性としては、果皮障害の発生が少なく外観が美しいこと、半世紀にわたる優良系統選抜により果皮が厚く、果汁が多くて香りが良いことが記されています。ゆずは登録品種として整理されているわけではなく、産地ごとに在来の樹から選び抜かれた系統が使われてきました。木頭ゆずの「半世紀にわたる優良系統選抜」という表現は、その積み重ねを指しています。

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四国以外のゆず産地はどこにあるのか

四国3県で全国の78.9%。残りの21.1%、約5,900トンは九州・中国・近畿・関東に散らばっています。規模は小さくても、出荷の向き先がまったく違う産地があります。

九州南部は加工に振り切った産地が多い

鹿児島県は1,281.4トンで四位。主な産地は曽於市の一市のみで、出荷量1,281.0トンがそのまま加工向けです。宮崎県も出荷量951.4トンのうち913.5トンが加工向けで、比率は96.0%。主な産地は西都市・小林市・日之影町です。

一方で大分県は1,143.8トンの収穫に対し出荷量が783.5トン、加工向けは555.0トンで、出荷量に対する加工向けの比率は70.8%です。収穫量に対して出荷量が少なく、樹上に残る果実や自家消費の多い産地でもあります。大分県の主な産地は日田市・宇佐市・杵築市。同じ九州でも、収穫した分がそのまま加工に回る県と、収穫量ほどには出荷量が伸びない県に分かれています。

埼玉県毛呂山町には江戸期のゆずの記録が残っている

埼玉県は217.4トンで十一位。主な産地は毛呂山町・ときがわ町・越生町です。毛呂山町の公表資料には、江戸後期に編さんされた『新編武蔵風土記稿』の瀧野入村の項に柚実が数十駄と記されていること、昭和6年頃の郷土誌に年に350から400箱(1箱400個入り)を生産し、東京の神田市場に「桂木柚子」の名前で出荷していたと記録されていることが紹介されています。

同じ資料は、滝ノ入地区の串田市太郎氏が養蚕から経営を転換して農園としてのゆず栽培を始めたことにも触れています。また、毛呂山のゆずは実生が多く結実まで15〜18年かかること、接ぎ木なら3〜5年で結実することを説明しています。高知が接ぎ木で伸びた一方、毛呂山には実生の古木が残っている。同じ作物でも産地によって樹の由来が違います。

京都府は出荷のほとんどが生果向け

京都府は140.1トンで十二位。主な産地は京都市・京田辺市・京丹波町です。数字で目を引くのは加工向けの少なさで、出荷量91.0トンのうち加工向けは9.3トン。出荷量の10.2%しかありません。全国平均の80.5%とは正反対で、京都のゆずはほとんどが生果として流れています。

同じように加工向けの比率が低いのは香川県(0.0%)、富山県(10.3%)、愛知県(11.1%)、静岡県(15.3%)です。逆に茨城県・鳥取県・岩手県・長野県は収穫量のほぼ全量が加工向けでした。産地の規模ではなく、地元にどんな出口があるかで数字の形が決まります。

中国地方と東北にも産地が残っている

山口県は377.4トンで九位。萩市・下関市・山口市が主な産地で、1ヘクタール当たり収穫量は15.3トンと高知・愛媛に次ぐ水準です。島根県は242.6トンで十位、益田市・大田市・出雲市が産地で、加工向けが91.8%を占めます。

東北では岩手県が12.9トン(陸前高田市・大船渡市)、宮城県が5.3トン(柴田町・丸森町・気仙沼市)、福島県が12.1トン(矢祭町・楢葉町・三春町)。いずれも量としては小さいものの、ゆずが育つ北限に近い地域で栽培が続いています。

産地ごとの違いを並べて見る

ここまでの内容を、主な産地ごとに一枚にまとめます。産地の特徴欄には、GI登録情報・自治体・JAの公表資料で確認できた記述だけを入れました。公的資料で裏の取れなかった味の評価は載せていません。

都道府県主な産地
市町村
収穫量
(t)
加工向けの
割合
公的資料で
確認できる特徴
高知安芸市
北川村
香美市
15,004.579.7%香美市の物部ゆずは
青果用に特化
青果率69%
愛媛鬼北町
西予市
松野町
4,472.794.6%鬼北町は寒暖差が
大きく香りが強い
特別栽培に取り組む
徳島那賀町
上勝町
つるぎ町
2,720.562.4%木頭ゆずは果皮が
厚く果汁が多い
GI第42号
鹿児島曽於市1,281.4100.0%出荷量の全量が
加工向け
大分日田市
宇佐市
杵築市
1,143.870.8%収穫量に対し
出荷量が少ない
宮崎西都市
小林市
日之影町
951.796.0%加工向けに
大きく偏る
埼玉毛呂山町
ときがわ町
越生町
217.446.4%実生の樹が多い
昭和6年頃から
桂木柚子として出荷
京都京都市
京田辺市
京丹波町
140.110.2%出荷のほとんどが
生果向け
収穫量は農林水産省。加工向けの割合は出荷量に占める割合で、同じく農林水産省「令和5年産特産果樹生産動態等調査」より。特徴欄は農林水産省の地理的表示登録情報、鬼北町、毛呂山町の公表資料による。

加工向けに回る割合は産地で10倍近くちがう

鹿児島の100.0%と京都の10.2%。同じゆずでも、産地によって流れる先がここまで違います。加工に振り切った産地は果汁工場や搾汁設備が地域にあり、生果向けの産地は青果市場や直売所が近い。どちらが優れているという話ではなく、産地の出口の形がそのまま数字になっています。

ゆずを原料として探すとき、収穫量の順位だけを見ると見落としが出ます。たとえば大分県は収穫量では五位ですが、加工向け出荷量に絞ると555.0トンで、愛媛県の4,116.9トン、徳島県の1,656.8トンに大きく離されます。

気候の条件が公的資料でどう説明されているか

産地の気候について、公的資料が挙げている条件は共通しています。山間部であること、昼夜の寒暖差が大きいこと、降水量が多いこと。木頭ゆずのGI登録情報は標高の高さと冷涼な気候、そして夏の多雨を挙げ、物部ゆずのGI登録情報は年平均気温約15℃と水はけの良い樹園地を挙げています。鬼北町は寒暖の差が激しい気候に触れています。

興味深いのは、多雨が果皮の病害を減らすという木頭ゆずの説明です。かいよう性コハン症は夏の乾燥が原因になる生理障害で、雨が多い那賀町ではその発生が軽減されるとされています。雨が多いことが不利にならない果樹だという点は、ゆずの産地が山あいに多い理由のひとつです。

産地と系統の関係は公表資料では追い切れない

ゆずには「本ゆず」「山根系」「多田錦」といった系統の呼び名が流通しています。ただしこれらは農林水産省の品種登録データベースにも農研機構のかんきつ属品種一覧にも載っておらず、公的な品種として整理されたものではありません。産地の在来樹から選抜され、慣用的に呼ばれてきた系統名です。

公的資料で確認できるのは、木頭ゆずが那賀町の在来種から半世紀にわたる優良系統選抜を重ねてきたという記述までです。どの産地でどの系統が何割を占めるかを示した公表データは見つかりませんでした。系統名を根拠に産地を選ぶより、実際に届いた果実で確かめるほうが確実です。

青ゆずと黄ゆずで出回る時期が変わる

ゆずは熟す前の緑色の状態(青玉)と、色づいた状態(黄玉)の両方が出荷されます。同じ木から採れる果実でも、時期と用途がはっきり分かれます。

出回り時期のカレンダー

区分栽培出回り時期出典
青玉ハウス4〜9月ごろJA高知県
青玉露地7〜10月ごろJA高知県
黄玉露地12月の冬至前
から4月ごろ
JA高知県
青ゆずハウス4〜6月ごろJA全農とくしま
冬至向け露地11月ごろから
販売が始まる
JA全農とくしま
JA高知県およびJA全農とくしまの公表資料より作成。産地や年によって前後します。

露地の黄玉は11月から冬至前後が山になる

ゆずの需要が最も集まるのは冬至です。JA全農とくしまは冬至向けの販売が11月頃から始まるとし、JA高知県は黄玉の出荷を12月の冬至前から4月頃としています。店頭に黄ゆずがまとまって並ぶのはこの期間です。

黄玉は果汁が多く、皮の色も濃く出ます。ぽん酢やゆず茶、皮の砂糖漬けなど、色と香りの両方を使う用途に向きます。

青玉は夏から秋のはじめに出る

露地の青玉はJA高知県の資料で7〜10月頃とされています。緑色の果皮は香りが立ちやすく、刻んで薬味にしたりゆずこしょうの原料に使われたりします。青玉は黄玉より果汁が少なく皮が硬いぶん、皮を刻む用途では扱いやすくなります。

ゆずこしょうのように青唐辛子と合わせる加工品は、青玉と青唐辛子の出回りが重なる夏から初秋に仕込まれます。

ハウス栽培が端境期を埋めている

JA高知県とJA全農とくしまは、いずれも露地栽培とハウス栽培を組み合わせて年間を通じた出荷を実現していると説明しています。ハウスの青玉は高知で4〜9月、徳島で4〜6月。露地の青玉が始まる7月までの空白を、ハウスが埋める形です。

黄玉が4月頃まで、ハウス青玉が4月から。この二つがつながることで、ゆずは通年で手に入る香酸柑橘になっています。

店頭で選ぶときに見るところ

生果を選ぶときの手がかりは四つあります。

  • 手に取ったときにずしりと重いもの。同じ大きさなら重いほうが果汁を多く含みます
  • 果皮にハリとツヤがあるもの。しぼんで柔らかくなったものは水分が抜けています
  • 黄玉なら色ムラが少なく、緑が残りすぎていないもの。青玉なら濃い緑で色が均一なもの
  • 軽く近づけたときに香りが立つもの。香りが弱いものは収穫から時間が経っている可能性があります

皮に細かいキズがあっても、皮ごと使う用途なら問題になりません。物部ゆずのように外観の美しさを基準にしている産地もありますが、それは青果として店頭に並べるための基準です。自宅で果汁を搾るなら、重さと香りを優先して構いません。

ゆず・すだち・かぼすは生産の規模がまるで違う

香酸柑橘としてひとくくりに語られることの多いゆず・すだち・かぼすですが、同じ調査の同じ年次で並べると規模がまったく違います。

香酸柑橘の収穫量を並べる

品目栽培面積
(ha)
収穫量
(t)
主な産地
(収穫量t)
ゆず2,228.628,143.5高知15,005
愛媛4,473
徳島2,721
かぼす550.86,613.7大分6,500
宮崎73
埼玉19
すだち371.13,356.3徳島3,293
佐賀35
高知12
シークヮーサー426.83,006.7沖縄3,006
鹿児島1
だいだい68.2585.2静岡212
和歌山136
広島115
ゆこう23.9171.4徳島171
直七
(田熊スダチ)
41.0160.0高知160
すだいだい9.5105.0山口105
農林水産省「令和5年産特産果樹生産動態等調査」種類別栽培状況(全国)より作成。

ゆずの28,143.5トンは、かぼすの4.3倍、すだちの8.4倍にあたります。香酸柑橘のなかでゆずが占める位置は突出しています。

すだちは徳島、かぼすは大分にほぼ全量が集まる

すだちは徳島県の3,293トンが全国3,356.3トンのうち98.1%を占めます。かぼすは大分県の6,500トンが全国6,613.7トンの98.3%。シークヮーサーは沖縄県の3,006トンで全国の99.9%です。

これに比べると、ゆずの高知県53.3%という数字は、一県に集中しているというより上位数県で分け合っている状態に近いものです。ゆずは複数の県に産地が分散している香酸柑橘だ、というのが正確な言い方になります。

ゆこうは徳島県のみ(上勝町・神山町・阿南市)、直七は高知県のみ、すだいだいは山口県のみの記録です。いずれも収穫量は二百トンに届きません。こうした品目は産地が途切れるとそのまま国内から消えます。

ゆずが複数県に産地を持っていることは、原料を安定して確保するうえでの強みでもあります。ある県が不作の年でも、他の県で補える余地が残ります。

90年分の統計に残るゆず産地の移り変わり

特産果樹生産動態等調査の長期累年統計には、ゆずの記録が昭和9年産まで遡って残っています。この90年分を追うと、今の産地の顔ぶれが当たり前ではなかったことがわかります。

昭和初期に名前が挙がるのは石川・群馬・埼玉

長期累年統計の最も古い記録は昭和9年産で、栽培面積は13ヘクタール、主産県として挙がっているのは石川・群馬・埼玉です。四国の県名はどこにも出てきません。昭和38年産では収穫量222トンのうち埼玉が200トンを占め、この時点でも首位は埼玉県でした。

高知県が主産県欄に初めて登場するのは昭和39年産です。このときは高知150トン・鳥取80トンで、全国の収穫量はまだ403トンしかありません。昭和41年産では埼玉130トン・高知110トンと埼玉が首位に戻り、昭和43年産は埼玉360トン・徳島197トン・山口162トン。関東と四国がせめぎ合う時期がしばらく続きます。

高知が首位に立ったのは昭和47年産

昭和45年産の主産県は徳島410トン・高知401トン・埼玉380トンで、三県がほぼ並んでいます。昭和47年産で高知775トン・徳島500トンとなり、ここから高知の時代が始まります。接ぎ木栽培の導入が昭和40年頃という北川村の説明と、この時期の伸びが重なります。

ただし一度だけ順位が入れ替わった年があります。平成2年産は徳島2,865トン・高知1,835トンで、徳島が首位に立ちました。昭和47年産以降で高知が二位に下がったのはこの年だけです。

埼玉県が主産県欄から消えるのも同じ時期です。統計に収録されている年のうち、埼玉が上位三県に載る最後は昭和45年産で、以降は四国と九州の県名が並び続けます。今の毛呂山町は規模の大きさではなく、江戸期からの記録が残る産地として位置づけられています。

栽培面積は頭打ち、収穫量は年ごとに大きく振れる

年産栽培面積
(ha)
収穫量
(t)
うち加工
向け(t)
上位産地
(収穫量t)
昭和454352,030-徳島410
高知401
埼玉380
昭和475672,516-高知775
徳島500
昭和551,3675,6151,499高知3,119
徳島1,800
昭和631,97211,7985,868高知4,785
徳島2,090
平成102,00117,76911,025高知7,600
徳島3,892
平成202,02420,07313,826高知10,041
徳島4,039
愛媛1,632
平成302,23622,04417,217高知11,662
徳島2,281
愛媛2,255
令和元2,24523,19117,809高知12,130
愛媛2,732
徳島2,574
令和22,29224,45919,290高知12,958
徳島2,951
愛媛2,804
令和32,21822,91817,135高知11,769
徳島2,817
愛媛2,674
令和42,19518,13113,165高知9,199
愛媛1,970
徳島1,819
令和52,22928,14421,520高知15,005
愛媛4,473
徳島2,721
農林水産省「特産果樹生産動態等調査」長期累年統計より抜粋。昭和45年産・昭和47年産は加工向けの記載がありません。

栽培面積は平成10年産の2,001ヘクタールから令和5年産の2,229ヘクタールまで、四半世紀でほぼ横ばいです。ところが収穫量は令和4年産の18,131トンから令和5年産の28,144トンへ、一年で1.55倍に跳ね上がっています。

ゆずは実のつきが良い年と少ない年が交互に来やすい果樹です。単年の数字だけを見て「生産が増えた」「減った」と判断すると読み違えます。産地の規模を測るなら、面積と複数年の平均で見るほうが実態に近くなります。

加工向けの割合は半世紀で2倍以上になった

昭和55年産の加工向け1,499トンは出荷量4,973トンの30.1%でした。平成10年産では出荷量16,569トンのうち11,025トンで66.5%、令和5年産では出荷量26,734.8トンのうち21,519.9トンで80.5%です。ゆずの使われ方が、生果から加工原料へ大きく移ってきたことが数字に出ています。

ぽん酢、ゆずこしょう、ゆず茶、果汁飲料。こうした加工品の広がりが、産地にとっての出口になりました。物部ゆずのGI登録情報が青果率69%を「全国平均18%を大幅に上回る」と説明しているのも、加工向けが主流になった現在を前提にした表現です。

加工原料としてゆずの産地を選ぶときに見るところ

食品の原料としてゆずを調達する立場では、収穫量ランキングとは違う数字を見ることになります。Agritureでも国産の野菜・果物を乾燥して粉にする仕事を受けており、その経験から見ている点を整理します。

収穫量ではなく加工向け出荷量で産地を見る

原料として動かせる量は、収穫量ではなく加工向け出荷量に近くなります。令和5年産の加工向け出荷量は高知11,442.0トン、愛媛4,116.9トン、徳島1,656.8トン、鹿児島1,281.0トン、宮崎913.5トン、大分555.0トンの順です。

収穫量では五位だった大分が、加工向けでは六位に下がります。逆に鹿児島は収穫量四位のまま加工向けでも四位を保ちます。産地に問い合わせる前に、この順序で当たりをつけておくと話が早くなります。

皮を使うのか果汁を使うのかで産地の選び方が変わる

ゆずは搾汁したあとに皮が残ります。果汁を目的とする加工では皮が副産物になり、逆もまた同じです。どちらを主に扱っている産地かで、手に入る原料の形と価格が変わります。

果汁の搾汁設備が地域にある産地なら、搾汁後の皮をまとめて出せる可能性があります。生果で流通している産地から皮だけを確保しようとすると、搾汁の工程を誰が持つかという話から始まります。加工向け比率が100%に近い鹿児島や宮崎と、10.2%の京都では、相談の入り口がまったく違います。

青玉と黄玉で仕込める時期が決まる

青玉を使う商品は7〜10月の露地物、あるいは4〜9月のハウス物に合わせて仕込むことになります。黄玉なら11月から冬至前後が山で、貯蔵品が4月頃まで続きます。年に一度しか原料が動かない前提で、年間の使用量を先に決めておく必要があります。

長期累年統計が示すとおり、ゆずの収穫量は年によって1.5倍以上振れます。不作の年に同じ量を確保しようとすると、価格も産地の余力も変わります。複数年の平均で数量計画を立て、産地を一つに絞らない組み方が現実的です。

乾燥と粉砕でできることと、できないこと

Agritureが受けているのは温風乾燥と粉砕です。粉砕は100メッシュ相当まで対応でき、パウダーにしたあとは10g以上の小袋充填まで社内で行えます。乾燥品の賞味期限は出荷日から6か月程度を目安にしています。

一方で、フリーズドライ、焙煎、チップス状への加工、レトルト殺菌は受けていません。ゆずは乾燥のさせ方で香りの残り方が変わります。温風乾燥でどこまで香りを残せるかを試作で確認したうえで、量産の形を決めるのが安全です。使いきれなかった皮を原料に回す取り組みについてはサステナブルな取り組みでも触れています。

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国産のゆずを乾燥・粉砕してお出ししています。カット形状や粒度の指定、継続してのお取引もご相談ください。規格は 乾燥ゆず・柚子パウダー に掲載しています。

少量でのご購入は、姉妹ブランドの通販サイト OYAOYA で承っています。徳島県産の柚子パウダー(細かめ)と、皮ごと粗挽きにした粗目タイプの2種類があります。

よくある質問

ゆずの生産量が日本一の都道府県はどこですか?

高知県です。農林水産省の令和5年産特産果樹生産動態等調査では、全国の収穫量28,143.5トンのうち高知県が15,004.5トンを占め、全国シェアは53.3%にあたります。栽培面積も894.8ヘクタールで全国の4割を超えており、面積でも収穫量でも全国一の産地です。

ゆずの生産量ランキングの2位と3位はどこですか?

令和5年産では2位が愛媛県の4,472.7トン、3位が徳島県の2,720.5トンです。以前は徳島県が2位でしたが、令和元年産で初めて愛媛県が上回り、令和2年産と令和3年産は徳島県が戻し、令和4年産からふたたび愛媛県が2位になっています。順位を引用するときは年次を確認してください。

ゆずの産地は四国に集中しているのですか?

高知・愛媛・徳島の3県で全国収穫量の78.9%を占めます。ここに鹿児島・大分・宮崎を加えた6県で90.9%です。ただしゆずの収穫量を報告している都道府県は37あり、埼玉県や京都府、島根県、山口県、さらに岩手県や宮城県にも産地が残っています。

高知県ではどの市町村でゆずが作られていますか?

令和5年産の調査で主な産地に挙がっているのは安芸市、北川村、香美市です。このうち香美市の「物部ゆず」は令和2年6月29日に地理的表示第96号として登録されており、青果用に特化した産地として、青果率が平成29年時点で69%と全国平均の18%を大きく上回ると記されています。

ゆずの収穫量はなぜ年によって大きく変わるのですか?

ゆずは実のつきが多い年と少ない年が交互に来やすい果樹です。全国の収穫量は令和4年産が18,131トン、令和5年産が28,144トンで、1年で1.55倍に変わりました。一方で栽培面積は平成10年産の2,001ヘクタールから令和5年産の2,229ヘクタールまでほぼ横ばいです。産地の規模を測るなら、単年ではなく複数年の平均で見るほうが実態に近くなります。

地理的表示(GI)に登録されているゆずはありますか?

2つあります。徳島県那賀町の「木頭ゆず」が平成29年9月15日に第42号として、高知県香美市の「物部ゆず」が令和2年6月29日に第96号として登録されています。木頭ゆずは果皮障害が少なく外観が美しいこと、果皮が厚く果汁が多くて香りが良いことが特性として記されています。

青ゆずと黄ゆずはそれぞれいつ出回りますか?

JA高知県の資料では、青玉はハウス栽培が4〜9月ごろ、露地栽培が7〜10月ごろ、黄玉は12月の冬至前から4月ごろとされています。JA全農とくしまはハウスの青ゆずを4〜6月ごろ、冬至向けの販売は11月ごろから始まると説明しています。露地とハウスを組み合わせることで、ゆずは通年で出回ります。

まとめ

令和5年産のゆずは全国で28,143.5トン。高知県が15,004.5トンで53.3%を占め、愛媛県4,472.7トン、徳島県2,720.5トンと続きます。四国3県で78.9%、上位6県で90.9%という集中度の高さが、この作物の特徴です。

二位と三位は固定されていません。令和元年産で愛媛が初めて徳島を上回り、令和2・3年産は徳島が戻し、令和4年産以降はふたたび愛媛が上です。順位を引用するときは年次を添えてください。

産地の性格は加工向けの割合に出ます。鹿児島は100.0%、宮崎は96.0%、愛媛は94.6%が加工向けで、京都は10.2%。同じゆずでも、生果として並ぶ産地と、果汁や加工原料として動く産地に分かれています。原料を探すなら収穫量ではなく加工向け出荷量から当たるほうが早く着きます。

そして90年の記録が示すとおり、今の産地は最初からここにあったわけではありません。昭和初期の主産地は石川・群馬・埼玉で、高知が首位に立ったのは昭和47年産です。接ぎ木の普及で結実までの年数が15〜18年から3〜5年に縮んだことが、その転換を支えました。ゆずの収穫時期についても別の記事で詳しくまとめています。

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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