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物価高と物流危機が生んだフードロスの「新構造」——Kuradashi調査が示す食品業界の盲点と2026年に取るべき3つのアクション

「取り組んでいるのに、ロスが増えている」——2026年4月8日に発表されたクラダシの調査レポートは、食品業界に不都合な現実を突きつけた。食品関連事業者78社への調査で、フードロスに取り組む企業は78.2%に達したが、それでもロスが「増えた」と答えた企業が少なくない。なぜか。その答えは、業界が想定していなかった「二重の外圧」にある。

目次

なぜフードロスは増えているのか:2つの新構造

調査が明らかにした最大の発見は、フードロス増加の要因が「管理の甘さ」ではなく、構造的な外部圧力によるものだという点だ。

① 物流2024年問題:見えにくいロスの増加

2024年4月に施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働は年960時間に制限された。調査で「物流の制約」をフードロス増加要因に挙げた企業は16.7%。一見少なく見えるが、前回2024年調査では0%だったことを考えると、1年間で「新しいロス要因」として認識されるようになったことを意味する。

具体的に何が起きているか。配送頻度の低下により、小売店では「賞味期限内だが次の便まで待てない」食品の廃棄が増えている。生鮮品は特に深刻で、産地から消費地への輸送時間が延びるほど廃棄リスクが上がる。物流コストも上昇しており、食品業界の物流費比率は従来の5%以下から5%超へ。このコスト上昇が、値下げ販売の余地を狭め、廃棄判断を早める悪循環を生んでいる。

② 物価高による需要変化:需要予測が当たらない

調査で最多の回答(83.3%)となったのが「物価高による需要変化」で、前回比27.8ポイント増という急激な上昇だ。食品価格の高騰は消費者の購買行動を変えた。特定商品の需要が急落し、これまで通用していた発注量の予測が外れる。結果として、売れ残りが増える。

この変化は単なる「景気変動」ではない。消費者は値上がりに応じて代替品への切り替えを行っており、その動きは従来のマーケティングデータでは捉えにくい。AIによる需要予測を導入している企業でさえ、急激な価格変動には対応しきれていないケースが報告されている。

「対策しているのに増える」という矛盾の正体

調査では、再流通サービス(クラダシなどのアウトレット販売)の活用が70.5%(前回比+13ポイント)と過去最高を記録した。利用者の94.9%が「セーフティーネットとして有効」と評価している。にもかかわらず、ロスが増える企業が出るのはなぜか。

答えは「タイムラグ」だ。再流通サービスへの登録からマッチングまでには時間がかかる。物価高や物流問題は突発的に起き、計画外の余剰在庫を生む。このスピードの不一致が「対策しているのにロスが出る」状況を作っている。

また、フードロス発生率「1%未満」と答えた企業が28.2%(前回比+7ポイント)と増加している事実は、改善が進む企業と、構造変化に対応できない企業との二極化が起きていることを示唆している。

食品業界が今すぐ取るべき3つのアクション

1. 物流制約を前提にした在庫設計の見直し

配送頻度が下がることを「例外」ではなく「前提」として在庫設計を再構築する必要がある。冷凍・乾燥・レトルトなど保存性の高い商品形態への展開や、消費地に近い分散型倉庫の活用が有効だ。特に野菜加工品を扱う事業者は、乾燥野菜や野菜パウダーなど加工度を上げることで輸送リスクを下げる選択肢がある。

2. 需要変動に連動した即応体制の構築

月次・週次の需要レビューサイクルを短縮し、需要変動シグナルを早期に捉える仕組みが必要だ。特に高価格帯商品は需要弾力性が高く、値上げのたびに代替品への流出が起きる。価格と需要の関係を常時モニタリングし、生産量調整のリードタイムを短縮することが廃棄削減に直結する。

3. フードバンク・再流通チャネルの「常時接続」化

再流通サービスや2026年4月に始まったフードバンク認証制度を、緊急時の「逃げ道」ではなく、販売チャネルの一つとして常時組み込む発想の転換が求められる。認証フードバンクへの寄付は、コスト削減(廃棄費用の削減)と社会的評価の両立ができる。特に余剰在庫が定期的に発生する食品メーカーにとって、計画的な活用が廃棄率を下げる最短経路だ。

「フードロス削減」の意味が変わってきた

クラダシの調査が示す本質は、フードロス削減が「モラルの問題」から「経営の問題」へ転換したということだ。廃棄コストの削減を動機とする企業が85.3%(調査内最多)という数字がそれを証明している。

今後、2030年の食品ロス60%削減目標に向けて規制の強化も予想される。物流制約と需要変動という「新構造」のフードロスに早期に対応した企業が、コスト競争力と社会的信頼の両面で優位に立てる。対策の有無ではなく、「どこまで構造的に組み込んでいるか」が問われる時代に入った。

参考:Too Good To Go日本上陸でフードロス削減アプリが食品産業に迫る転換点2023年度食品ロス464万トン

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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