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スーパーの当日廃棄食品をひとり親家庭へ——「ステナス」実証実験で平均42%のマッチングを達成

2026年4月7日、一般社団法人サステイナブルフードチェーン協議会とネッスー株式会社は、環境省の令和7年度モデル事業として実施した食品マッチングプラットフォーム「ステナス」の実証実験結果を発表した。食品スーパーで当日販売できなくなった生鮮食品をひとり親世帯や奨学金受給学生にリアルタイムで届けるこの仕組みは、食品ロスとこどもの貧困という2つの社会課題を同時に解決する画期的なアプローチとして注目を集めている。

目次

「ステナス」とは何か:当日廃棄予定の生鮮食品をリアルタイムでマッチング

「ステナス」は「捨てない」をコンセプトに開発された食品マッチングプラットフォームだ。食品スーパーで当日中に賞味・消費期限が切れる生鮮・日配食品(農産品、水産品、畜産品、インストアベーカリー等)を、スマートフォンアプリを通じてひとり親世帯や奨学金受給学生、こども食堂などの支援対象者にリアルタイムで案内する仕組みだ。

通常は閉店間際に廃棄される食品を有効活用するため、価格は通常の店頭価格から60〜75%引きで提供。さらに、児童扶養手当または奨学金の受給者証を提示した場合は「ソーシャル・プライシング」が適用され、追加50%割引となる。食品ロス削減と経済的支援を価格設計で一体化させた点が、従来のフードバンクや値引き販売とは異なる革新性だ。

実証実験の結果:4店舗、428名、平均42%のマッチング率

実証実験は2025年10月6日から11月30日の約2カ月間、株式会社ライフコーポレーションの3店舗(竹の塚店・西蒲田店・千歳烏山店)と株式会社東急ストアの1店舗(中目黒本店)で実施された。

主要な成果は以下のとおりだ。

指標結果
利用登録者数428名
実際の購入者数82名
全体のマッチング率(重量ベース)平均42%
インストアベーカリーのマッチング率86%
加工肉のマッチング率66%
最高実績ライフ西蒲田店・最終週 77.9%
総有効利用量約340kg

特にインストアベーカリーが86%というマッチング率を達成した点は注目に値する。焼きたてパンは当日廃棄率が高い商品の代表格だが、「今日中に消費する」動機の強い支援対象者層との相性が高いことが実証された。

食品ロスとこどもの貧困:2つの課題を同時に解決する設計

日本の食品ロスは年間約464万トン(令和5年度)。そのうち事業系(スーパー・コンビニ等)からの廃棄は231万トンを占める。一方、日本の子どもの相対的貧困率は11.5%(厚労省・2022年)で、ひとり親世帯に限ると44.5%に達する。

「ステナス」のユニークな点は、この2つの課題が構造的につながっていることを直視した設計にある。食品廃棄コストに悩む小売店と、食費を節約したい支援対象者を直接結ぶことで、中間コストを最小化しながら双方にメリットをもたらす。Too Good To Goが日本市場で注目を集めている背景とも共通する「廃棄食品の再評価」という流れの中に位置づけられる取り組みだ。

野菜・生鮮食品に特化した意義

従来のフードバンクは缶詰や乾物などの保存食が中心だった。「ステナス」が農産品・水産品・畜産品などの生鮮食品を対象とした点は、これまでほとんど手が届かなかった「当日廃棄予定の野菜や魚」をすくい上げる新しいアプローチだ。

廃棄される野菜を救う取り組みはアップサイクルや規格外野菜の活用など多様化しているが、「ステナス」は消費者への直接流通という最もシンプルなルートで廃棄を防ぐ。特に野菜・果物などの農産品は品目によってマッチング率のばらつきがあり、今後の改善余地も大きい。

2027年全国展開を目指す:スケールアップの課題と展望

今回の実証結果を踏まえ、ネッスー株式会社は2025年度中にサービスの正式リリースを行い、2026年度には首都圏および一部地方都市へ拡大、2027年度には全国展開を目指すロードマップを描いている。

スケールアップに向けては、参加小売店舗数の拡大と支援対象者への周知が課題だ。今回の実証では登録者428名のうち実購入者が82名(約19%)にとどまっており、アプリ活用率のさらなる向上が必要だ。一方、最終週にライフ西蒲田店で77.9%という高いマッチング率を記録した事実は、システムの習熟とともに成果が向上することを示している。

環境省がモデル事業として採択したことは、行政が「食品ロス削減×子ども支援」という複合課題へのアプローチを正式に評価したことを意味する。農水省のフードバンク認証制度とも連携が期待される分野であり、今後の政策展開に注目したい。

「もったいない」を仕組みにする時代へ

「ステナス」の実証結果が示すのは、技術と価格設計の工夫次第で、食品廃棄の削減と社会的弱者への食品支援が両立できるという可能性だ。日本が誇る「もったいない」精神をデジタルプラットフォームで具現化した先進事例として、国内外からの注目も高まっている。

野菜や生鮮食品の廃棄問題は、農家・小売・消費者・行政が連携して初めて解決できる。「ステナス」のような仕組みが全国に広がることで、食品サプライチェーン全体のロス削減に貢献することが期待される。

出典:サステイナブルフードチェーン協議会プレスリリース(PR TIMES、2026年4月7日)食品産業新聞社(ステナス実証開始)

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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