皆さま、こんにちは。株式会社Agritureの小島(コジマ)です。私たちは規格外野菜や収穫余剰といった未利用資源を乾燥や粉末化によって新しい食品原料へと生まれ変わらせる取り組みを行っています。日々、野菜に新しい価値を与える仕事をしていると、世代ごとの食の価値観の変化を強く感じます。私は1998年生まれで、まさにZ世代にあたります。消費者の一人として、そして食品メーカーを運営する立場としても、「この世代がどんな理由で商品を選ぶのか」を肌で体感しています。Z世代の購買動機は「価格」から「共感」へ近年の調査(博報堂生活総研・2024年)によれば、10〜20代の約50%が「売上の一部が環境や社会のために寄付される商品を買う」と回答しています。Z世代にとって「安いから」「便利だから」ではなく、「環境にやさしいから」「社会貢献につながるから」といった理由が購買動機になりつつあるのは確かです。ただ一方で、同じ調査では10代の過半数が「社会や環境問題に取り組むことに疲れを感じる」と答えており、“エコ疲れ”の兆候も見られます。つまり、サスティナブルだからといって必ずしも歓迎されるわけではなく、「どう伝えるか」「生活に無理なく取り入れられるか」がポイントになるのです。参照:https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/111706/私自身も同世代として強く共感します。例えば、エシカルやオーガニックと書かれていても、価格が極端に高かったり、日常の中で使いづらかったりすると、結局は手が伸びない。Z世代は意識が高い分、理想と現実のギャップに敏感で、その“しんどさ”を感じている人も多いと感じます。だからこそ「等身大で続けられるサスティナブル」が重要なのです。エコ疲れが生まれる理由なぜZ世代は社会課題や環境問題への「関心が高い」一方で「疲れ」も生まれてしまうのでしょうか。第一に、義務感の強さが挙げられます。学校教育やSNSを通じて環境問題に触れる機会が多いZ世代は、「自分も行動しなければならない」という圧力を感じやすい状態にあります。たとえば「ペットボトルを使うのは悪いこと」「肉を食べるのは環境破壊につながる」といったメッセージがSNSで繰り返される断片的な情報を見ることで、義務感が生まれるのかもしれません。第二に、価格の高さです。エシカル商品やオーガニック食品は、従来品よりも割高なケースが多く、学生や若手社会人にとっては継続的な購入が難しい現実があります。「環境のために応援したいけど、毎回は買えない」という葛藤が積み重なり、結果として「疲れ」につながります。第三に、生活への負担感も見逃せません。調理に手間がかかったり、購入できる店舗が限られていたりすると、日常生活に取り入れるハードルは高くなります。「良いことだと分かっていても、面倒で続かない」という感覚は、多くの若い消費者が共通して抱えている現実です。こうした要因が重なることで、Z世代は「意識は高いが行動は続かない」という矛盾を抱えやすくなります。そしてこの矛盾こそが、エコ疲れという言葉で表される心理的な摩耗の正体です。企業やメーカーにとって、この事実は重要な示唆を含みます。単に「環境に良いから選びましょう」と訴えるだけでは逆効果になりかねません。むしろ、「無理なく続けられる」「買って良かったと思える体験設計」が欠かせないのです。食品OEMにおいても、環境価値を“正しいこと”として押し付けるのではなく、“日常に自然になじむ選択肢”としてどう提示するかが問われています。Oatlyの事例──エコ疲れを超えるブランド設計スウェーデン発のオーツミルクブランド Oatly(オートリー) は、Z世代から高い支持を得ている代表的なプラントベース食品です。その特徴は、単に「牛乳の代替だから環境にやさしい」という機能にとどまらず、エコ疲れの原因となる要素(義務感・価格・生活負担)を一つずつ解消する工夫を取り入れている点にあります。1. 義務感を“楽しさ”に変える多くのサスティナブルブランドは「環境のために選ぼう」と呼びかけますが、それは時にやらされ感を生み、若い世代を疲弊させてしまいます。Oatlyはその真逆を行きました。代表的なのが「Like milk, but made for humans(牛乳のようだけれど、人間のために作られた)」という広告コピーです。日本語にすると一見平凡ですが、英語圏では「牛乳=人間のもの」という常識にツッコミを入れた挑発的なメッセージとして受け止められました。つまり面白さというよりも、“既存業界への問題提起”と“反骨精神” を前面に出すことで、Z世代の共感をつかんだのです。これにより「義務として選ぶ」のではなく「語りたくなるから選ぶ」という購買動機に転換しました。2. 価格への“納得感”をつくるプラントベース飲料は一般的に牛乳より高価ですが、Oatlyは“高級な代替品”ではなく“日常に溶け込む選択肢”として位置づけました。スターバックスなど大手カフェチェーンに導入することで、特別な商品ではなく「当たり前に選べる一杯」として消費者に浸透させたのです。さらに、パッケージにはカーボンフットプリントを明記し、「少し高くても、この選択が環境負荷を確実に減らす」という合理的な理由を与えました。Z世代は価格に敏感ですが、“価値>価格”を示す情報があれば受け入れやすい。Oatlyはその仕組みを作り上げました。3. 生活への負担を減らすシンプルな利用体験Oatlyは「特別な準備が必要なサスティナブル」ではなく、「普段の選択を少し変えるだけ」のサスティナブルを提供しました。牛乳と同じようにコーヒーやシリアルにそのまま注ぐだけで使えるため、調理の手間はゼロ。これは「良いことだと分かっていても、面倒で続かない」という生活負担の問題をクリアし、日常の中で無理なく続けられる形を実現しました。Oatlyの事例から見えるのは、サスティナブルを“正しい行動”ではなく“自然な自己表現”に変えることの重要性です。義務感をユーモアで解きほぐし、価格を納得感で補い、生活負担をシンプルさで解消する──こうした一つひとつの工夫が、Z世代にとって「仕方なく」ではなく「共感できるから選ぶ」ブランド体験につながっています。サスティナブル商品の本当の強みは、環境価値そのものではなく、それを「無理なく続けられるかどうか」にあります。Oatlyはその答えを示し、Z世代の支持を集めた代表例だといえるでしょう。まとめ|自然に選ばれるサスティナブルへZ世代は環境や社会課題に強い関心を持つ一方で、“エコ疲れ”も抱える世代です。義務感や価格、生活負担といった壁を乗り越えなければ、サスティナブル食品は長く続く選択肢にはなりません。Oatlyの事例が示すように、必要なのは「正しいから選ぶ」のではなく、「共感できるから、自然に選びたくなる」仕掛けです。その視点は、野菜を原料とする食品づくりにも直結します。規格外や余剰といった未利用の野菜を、手間なく取り入れられる乾燥やパウダーに加工することは、Z世代の「等身大で続けられるサスティナブル」に合致します。これからの食品業界に求められるのは、価格競争ではなく共感競争です。食べる人の暮らしに寄り添いながら、「環境にやさしいからこそ誇らしく選べる」食品をどのように設計できるか。そこに次世代のブランド力を築くヒントがあると考えています。