Z世代は、これまでの世代とはまったく違う感性と行動で商品を選んでいます。特に食品ジャンルでは、「誰かの投稿で知ったから買った」という流れが当たり前になっていて、テレビCMや検索がきっかけになるケースはどんどん減っています。たとえば、Instagramのストーリーで「かわいいお菓子」を見かけて気になり、リンクをタップしてそのままECサイトで購入する。そんなインスタ発・購買行きの流れが、Z世代の中ではごく自然に起きています。このように、SNSを入り口とした消費スタイルを前提にしない商品は、そもそも「選ばれる土俵に上がっていない」のと同じです。この記事では、Z世代の消費行動を出発点に、食品開発やブランド設計をどう変えていくべきかを、やさしい言葉で解説していきます。Z世代にとって、SNSは「調べる場所」ではなく「見つかる場所」Z世代(おおよそ1996年〜2012年生まれ)の情報の入り口は、もはやGoogleではありません。彼らはInstagramやTikTokで流れてくる情報の中から、「気になる」「これいいかも」と思った商品を見つけて、そのまま購入につなげていきます。GenZとは?SNSは“情報を探す場所”というよりも、“情報が流れてくる場所”です。受け身のように見えますが、自分の感覚に合った投稿だけを取捨選択するスキルに長けていて、直感的に「これは自分っぽい」と感じるものを選びます。そのため、企業としては「どうすればSNS上で自然に目に留まるか」「見つけられたときに、どう心を動かせるか」という視点が欠かせません。「美味しい」だけでは選ばれない時代Z世代が食品を選ぶとき、もちろん「美味しそうかどうか」は重要なポイントです。でも、それだけでは不十分です。大切なのは、「これを買った理由を、自分の言葉で誰かに話せるかどうか」です。たとえば、「可愛いパッケージだなと思って調べたら、使っている素材は捨てられる野菜だった」「韓国で流行ってるトゥンカロン、日本でも売ってるの見つけて即買いした!」このように「味+ストーリー」「見た目+共感できる背景」がセットになっていると、Z世代の心に刺さります。つまり、商品そのものではなく「その商品を選ぶ理由」が、彼らの購買行動を決めているのです。Z世代向けマーケティング事例2選共感と拡散を設計した成功パターンZ世代に商品を届けるためには、ただSNSに投稿するだけでは不十分です。「発見される仕掛け」と「共感してもらえる理由」を明確に持ったマーケティング設計が必要になります。ここでは、Z世代の行動特性にしっかりと寄り添った成功事例を2つご紹介します。Liquid Death ― ノンアルでもかっこいいを成立させた水クラブでもライブでも「水でいられる自由」をつくったLiquid Deathは、アメリカ発のミネラルウォーターブランドです。一見するとクラフトビールのようなデザインですが、中身はただの水。しかしこの“ふざけた”プロダクトが、Z世代を中心に大きな支持を集めています。背景にあるのは、Z世代に見られる「ノンアル志向」の高まりです。飲酒を避ける若者は年々増えていますが、実際の場面では「付き合いが悪いと思われたくない」「水やソフトドリンクだと浮いてしまう」といった心理的ハードルが残っています。Liquid Deathは、そうしたジレンマに対して「水だけど、見た目は最もイケてる」という新しい選択肢を提示しました。クラブ、フェス、ジム、スケートパークなど、スタイルを大切にしたいシーンにぴったりフィットするよう、ビジュアルは黒を基調にしたロックテイスト。スローガンは“Murder Your Thirst(喉の渇きを殺せ)”。広告には魔女やゾンビを登場させるなど、ブランド全体が一貫して“悪ノリ”を貫いています。エンタメとしてのブランディングと、サステナブルの両立Liquid Deathの特徴は、強烈なキャラクター設計にとどまりません。環境への配慮も明確に示しています。商品はすべてアルミ缶入りで、プラスチックは一切使用していません。缶のリサイクル性は高く、製造・流通面でもサステナブルを意識した設計になっています。さらに、売上の一部を環境保護団体へ寄付するなど、社会的なメッセージも発信しています。ただし、それを“売り文句”にはしていません。「これ、実はエコなんだよ」と後から知るようなバランス感覚が、Z世代にとって“押しつけがましくない”と感じられ、支持につながっています。Z世代に刺さった理由Liquid Deathがここまで成功した背景には、以下のような“Z世代ならでは”のニーズを捉えた戦略があります。ノンアルでもかっこよくいたい→ 飲むものが水でも、見た目で自分らしさを表現できる説教臭いエコは避けたい→ サステナブルは前面に出さず、「なんか良さそう」で十分社会と緩やかにつながっていたい→ 環境や社会貢献に関われる安心感もあるブランドに“態度”を求めている→ ただの商品ではなく、考え方に共感したいLiquid Deathは、Z世代が感じていた「ノンアルのダサさ」や「エコ商品のつまらなさ」を逆手に取り、“水なのに最高にスタイリッシュ”という逆張りの価値提案で共感を獲得しました。マーケティングの学びLiquid Deathの事例は、以下のような商品・ブランド開発においてヒントになります。中身が「普通」でも、見せ方と文脈でまったく違う体験を設計できるサステナブルや健康を“前に出さない”ことで、Z世代に届きやすくなるノンアル、低刺激、ミニマルといった「選びにくい価値」を選びやすくすることで、新しい選択肢が生まれるブランドは「機能」ではなく「スタンス」で選ばれる時代にあるZ世代から逆算する食品開発の考え方Z世代の行動や感性をベースに商品開発を考えると、従来のやり方とは大きく変わってきます。スマホで映えることを前提にする:実物の見た目だけでなく、「スマホ画面に映ったときにどんな印象か?」を意識します。パッケージデザインや色味、断面の見せ方まで工夫することが大切です。ストーリーを商品に練り込む:なぜこの商品を作ったのか?誰が作っているのか?その背景を丁寧に設計し、それをSNSでも自然に語れるようにしておきます。投稿したくなる体験をつくる:開封動画、限定フレーバー、参加型キャンペーンなど、ユーザーが「シェアしたくなる仕掛け」を商品に持たせます。購買までの導線をスムーズにする:SNSで見て気になったとき、すぐ買えるECページにたどり着けるよう、ストーリーや投稿に購入リンクを設置する工夫も欠かせません。まとめ:Z世代に選ばれる商品は、「発見される前提」で作るZ世代は、商品を探しているのではなく、「商品に出会って」購買しています。そしてその出会いは、インスタやTikTokといったSNSで起きます。そのため、これからの食品開発では、「どこで売るか」よりも「どこで見つけられるか」「どう語られるか」を最初から設計しておく必要があります。Z世代に響く商品とは、「かわいい」「美味しい」だけで終わらず、「共感できる」「ストーリーがある」「誰かに話したくなる」要素を備えたものです。ただの商品づくりではなく、SNSという社会の中で共鳴される“存在の作り方”が問われる時代。Z世代の消費行動から逆算して設計された商品こそが、これからの売れる理由になります。Z世代とは?年齢・特徴・消費行動とサステナブル志向、他世代との比較Z世代が選ぶ食品。環境配慮がブランド力になる時代