本レポートは日本国内を中心に乾燥野菜関連産業の市場状況やトレンドを弊社視点で記載しました。また、各項目に弊社の考察を入れております。乾燥野菜をはじめとするドライ食品を使った商品開発にお役立てください。また、乾燥野菜市場への関心がある方は是非お問い合わせください。市場規模推移と成長率日本における乾燥野菜市場は近年着実に拡大しています。2022年の国内市場規模は約7億4290万ドル(約1099億円)に達し、2023年には8億0790万ドル程度に拡大したと推計されています。今後も年平均8.3%という高い成長率が見込まれており、2033年には市場規模が約17億8900万ドル(約2,646億)に倍増する予測です。(2025/03/08 1米ドルは約148円換算)この拡大の背景には、消費者の健康志向や保存食需要の高まりに加え、新型コロナ禍での内食需要増が一時的に市場を押し上げたことがあります。実際、2020年前後には巣ごもりによる料理需要で乾物市場全体が伸長しましたが、その反動で2022年はやや苦戦する局面も見られました。しかし、コロナ後も家庭での手作り需要は一定程度定着しており、市場は底堅く推移しています。世界的にも乾燥野菜の需要は伸びており、グローバル市場は2022年に57億ドル規模から2029年には約92億ドルに達する見通しで、年平均7%前後の成長が報告されています。日本市場もこうした世界的トレンドの一部として、中長期的に堅調な拡大が期待できます。弊社の考察日本国内においては、キャベツをはじめとする生鮮野菜の高騰。また、冷凍野菜などの冷凍食品が多く家庭にストックされる影響で保管スペースがないことによる、常温で保管できる商品に注目が集まっていると言えます。また料理シーンでは、ひと手間を加えるだけで出来る時短料理が定番となっていることから、乾物などの簡単にお湯に入れて使える商品は着目されているように思えます。今後も、この動きは増加していくと考えております。グローバルにおいては冷凍流通の未発達や、地理的条件による生鮮野菜の調達の難しさ等の観点から乾燥野菜が一つのソリューションになり得ると考えています。ただ、ドライフルーツなどは中東をはじめ昔から食べる文化があり、今後は一時期アメリカでトレンドとなったDtoCブランドなど、個別ブランドの台頭も考えています。用途別市場動向乾燥野菜の市場動向を用途別に見ると、インスタント食品向け、業務用(食品産業・外食)、家庭用の各分野で特徴が異なります。インスタント食品向け即席麺やスープなどインスタント食品産業は、乾燥野菜の最大の需要先の一つです。カップ麺に入ったキャベツやニンジン、乾燥スープの具材など、乾燥野菜は不可欠な存在となっています。国内の即席麺市場は成熟期にあり、乾燥野菜の使用量も概ね安定しています。例えば、とある地域(九州)では即席麺向けの乾燥野菜需要が前年並みに推移しており、大きな伸びはないものの堅調な需要が続いています。近年はインスタント食品でも健康志向に対応して野菜量を増やした製品や高付加価値のフリーズドライ具材を使う動きがあり、こうした商品開発が乾燥野菜需要の下支えになっています。また、即席味噌汁や即席スープの分野でも乾燥野菜が多用されており、このカテゴリーは簡便性と栄養価の両立から堅調に拡大しています。実際、味噌汁の具などフリーズドライ食品はその手軽さや風味保持の利点で消費者に広く受け入れられており、市場を着実に伸ばしています。業務用(外食・食品加工)レストランや惣菜メーカー、食品工場など業務用途でも乾燥野菜を利用するケースが増えています。人手不足や食材ロス削減の観点から、下処理不要で長期保存可能な乾燥野菜は飲食店の現場で重宝されます。近年は天候不順や野菜高騰の際に、外食産業が乾燥野菜を代替材料として利用するケースも増加しました。ある卸売業者では生鮮野菜価格の高騰を受けて乾燥野菜類の売上が大きく伸長し、使い勝手と日持ちの良さからここ数年継続的に需要が伸びていると報告されています。例えばキャベツや青梗菜など特定の野菜が天候不順で品薄になった際、乾燥品で補う動きが見られ、価格安定剤のような役割も果たしています。また、食品メーカーにとっても乾燥野菜はインスタント食品やレトルト食品の重要な原料であり、一定の需要が見込まれます。業務用市場はボリュームが大きく、ある調査では乾燥野菜市場の需要の多くを商業・業務用セグメントが占めるとされます。ファストフードや中食産業で手軽に野菜メニューを提供するための素材として、乾燥野菜の活用が進んでいるのです。家庭用一般消費者向けの乾燥野菜製品も多様化しています。スーパーなどで販売される乾燥野菜ミックス、フリーズドライ野菜スープの素、乾燥カット野菜パックなど、家庭で手軽に野菜料理ができる商品が人気です。コロナ禍を経て家庭での料理機会が増えたこともあり、乾燥野菜を常備菜や非常食として備える家庭が増えました。消費者が乾燥野菜を選ぶ理由として、「野菜を洗ったり切ったりする手間が省けて便利」「必要なときに使えて生鮮より無駄が少ない」といった点が挙げられます。実際、日持ちがしてロス削減になる乾物(乾燥野菜)を選ぶ消費者が増えているとの報告もあります。また、日本は災害に備えた食品備蓄の意識が高い国でもあり、非常食需要も家庭用乾燥野菜市場を支えています。長期保存が可能な乾燥野菜は災害時の備えとして安心感があり、地震や台風に備えてストックする動きが広がっています。例えばフリーズドライの野菜ミックスや乾燥根菜類は、水やお湯を加えるだけで食べられるため備蓄品として注目されています。家庭用分野は総需要に占める割合こそ業務用より小さいものの、新商品開発や販促次第で伸びしろが大きく、メーカー各社もこの市場に注力し始めています。弊社の考察インスタント食品をはじめ、今まで使用されていた業界ではなくてはならないものになっています。即席麺などは大きなリプレイスは起きないものと考えており需要は一定存在し続けると考えています。一方で、乾燥野菜の利便性を活かした商品開発は増えている傾向にあると感じており、特定の料理に使う具材といった新商品や、野菜増量などの健康意識の製品は今後増えていくと思われます。外食産業では乾燥野菜ニーズは増加していますが、生鮮野菜に比べて単価の高さや水戻しするときの対応する人による微妙なズレがあり導入は慎重であると感じています。ただ、外食においては一般的な工業化された製品よりは、オリジナリティが出せる品目や加工方法の乾燥野菜が重要になると考えています。最後に家庭用製品は、切り干し大根をはじめとし昔から家庭に根付いています。ただ、「どうやって使えば良いかわからない」「味噌汁以外の使い方を知りたい」など正しい使い方が浸透しておらずマーケットとしては成長中であり、今後伸び代が大きい領域です。さらに、災害に備えた防災食としてのローリングストックなどは乾燥野菜の成長に関連する考え方かもしれません。消費者トレンド: 健康志向・保存食ニーズ・簡便食ブーム乾燥野菜の普及を後押しする消費者トレンドとして、健康志向・保存食ニーズ・簡便調理(時短)志向の高まりが挙げられます。健康志向と栄養価への期待現代の消費者は手軽さだけでなく健康面も重視しており、野菜の栄養をしっかり摂りたいと考える人が増えています。乾燥野菜は水分を抜いているだけでビタミンや食物繊維など野菜本来の栄養と旨味が凝縮されており、ヘルシーな食品として注目を集めています。保存料や添加物を使わず長期保存できるため、素材そのものの自然な風味と栄養を活かせるのも魅力です。特に無添加・オーガニック志向の層には、ブドウ糖などを添加していない純粋な乾燥野菜が支持される傾向があります。実は乾燥野菜メーカーの中には、乾燥工程で色味や食感を良くするために微量のブドウ糖を加える場合がありますが、最近では「ブドウ糖不使用」の商品が開発されるなど、よりナチュラル志向の商品展開も進んでいます。また、野菜不足の解消策として乾燥野菜を取り入れる動きも見られます。現代人の1日あたり野菜摂取目安350gに対し、忙しさから野菜不足に陥りがちな人々にとって、乾燥野菜は手軽に野菜を補える手段です。水で戻せばすぐ使える乾燥野菜を常備すれば、サラダや炒め物に生野菜がなくても即席で野菜料理ができるため、健康管理に役立つと評価されています。保存食需要・防災意識日本の消費者は昔から非常食や保存食への関心が高く、乾燥野菜はそのニーズに合致しています。台風や地震など災害時に備えて長期保存できる食品をストックしておく防災意識が広がる中、乾燥野菜は常温で半年以上保存できるものも多く、家庭の備蓄品として支持されています。乾燥野菜なら冷蔵不要で賞味期限も長いため、「いつか使える安心感」が購買動機になるケースもあります。また食品ロスの観点からも、必要な分だけ使えて残りは保管できる乾燥野菜は無駄を減らす賢い選択肢といえます。「買っても使い切れず傷ませてしまう」生鮮野菜に比べ、乾燥野菜は廃棄ロスが少ないことを理解する消費者が増えています。特に単身世帯や高齢者世帯では、一度に生鮮野菜を大量に消費できないため、小分けで長持ちする乾燥野菜の価値が高まっています。簡便食・時短ニーズの拡大忙しい現代人にとって、「料理の手間を減らしたい」「すぐ食べられるものが欲しい」というニーズは年々高まっています。乾燥野菜は切る・洗うといった下処理が不要で、そのまま料理に投入できるため、調理時間の短縮に貢献する食材として重宝されています。例えば忙しい夜に乾燥野菜と味噌をお湯に溶かせば即席味噌汁ができたり、乾燥野菜ミックスを炒め物に加えれば包丁いらずで野菜炒めができたりと、時短効果は大きいです。コロナ禍以降、自炊疲れした人々が「手軽さ」を重視する傾向も指摘されており、業界としても「乾燥野菜を使えばこんなに簡単に一品できる」という提案に力を入れています。事実、乾物業界では内食需要を維持するために「時短」「手軽さ」をアピールすることが重要だと言われています。また、個包装・小容量の使い切りパックやチャック付きで保存しやすいパッケージの乾燥野菜が人気となっており、外出先でも手軽に野菜が摂れる商品開発が進んでいます。このように利便性の追求が消費者の購買意欲を刺激し、乾燥野菜市場拡大の一因となっています。弊社の考察野菜は毎日摂ったほうが良いのは分かっているものの、350gを生野菜で摂るのは正直大変です。さらに複数品目の野菜を買うのは意外と値段も高くなることから、食べる野菜が偏ってしまうこともあります。そんな時に、乾燥野菜を使うと約10分の1程度に濃縮しているので1日分の野菜摂取量を達成することは可能です。ただ、乾燥することで生鮮に比べてビタミン等は失われるため、生野菜との併用が大切です。Amazon等で人気の乾燥野菜は、大容量で非常に使いやすい一方でブドウ糖が添加されており本格的な料理を楽しみたい方は使いずらいかもしれません。また、近年食の安全性を考える機会が多くなり、生産者が見えるや添加物不使用などのトレンドもあり、ブドウ糖不使用であることも重要になりつつあります。しかし、ブドウ糖を使うことでより長期保存できたりとメリットがあるため、ターゲットによって各企業は対応をしています。サステナブル要素: 環境負荷低減・食品ロス削減・持続可能な農業乾燥野菜の普及はサステナビリティ(持続可能性)の観点からも大きな意義があります。生鮮野菜と比べた際の環境負荷低減効果や食品ロス削減、さらには持続可能な農業の支援など、乾燥野菜には地球と社会に優しいメリットが多く存在します。食品ロスの削減まず、乾燥野菜は食品ロスの削減に直結します。日本では年間約400万トンものまだ食べられる野菜が廃棄されていると言われます。形が不揃い・傷があるといった理由で市場価値が低い「規格外野菜」も、乾燥させれば美味しく長期保存できる食品に生まれ変わります。実際、近年注目されている取り組みとして、規格外野菜を乾燥野菜にアップサイクルして食品ロス削減と農家支援に繋げる動きがあります。乾燥加工により常温で半年以上保存できるため、収穫期に余った野菜を捨てずに済み、需要に合わせて後日供給することが可能になります。これにより収穫量の変動によるムダを減らし、フードロスの発生を食い止める効果が期待できます。環境負荷の低減次に、乾燥野菜は環境負荷の低減にも寄与します。生鮮野菜は傷みやすく輸送・保管中に廃棄が出やすいですが、乾燥野菜なら腐敗しにくいためサプライチェーン全体での廃棄ロス削減につながります。また、水分を飛ばしている分重量・体積が減少するため輸送効率が上がり、結果として輸送に伴うCO2排出削減も見込めます。冷蔵や冷凍での保管も不要で常温流通できることから、エネルギー使用量の削減という点でも有利です。さらに、廃棄される生ごみが減ることで焼却処分に伴う温室効果ガス排出の抑制効果もあります。野菜を乾燥させて保存性を高めることは、保存料を使わずに「腐らない食材」を作ることでもあり、環境と食品安全の双方にメリットがあると言えます。持続可能な農業最後に、乾燥野菜の活用は持続可能な農業にも貢献します。規格外品や余剰生産物に新たな活路を与えることで、農家の収入機会を増やし経営の安定化に資するからです。ある乾燥野菜の取り組みでは、「捨てざるを得ない野菜に価値をつけることで農家の収入確保や農業の高齢化・後継者問題にも寄与している」と報告されています。売り物にならなかった野菜を乾燥加工して適正価格で買い取る仕組みは、いわば農業分野のフェアトレードであり、生産者のモチベーション向上や世代交代の支援につながります。さらに、乾燥野菜という形であれば季節に左右されず年間を通じて販売できるため、農家は収穫期以外にも収益源を確保でき、農業の継続性が高まります。消費者側も国産の乾燥野菜を積極的に利用することで、結果的にフードマイレージの削減や地元農業の支援につながるでしょう。以上のように、乾燥野菜は市場拡大と消費者ニーズの充足だけでなく、サステナビリティの観点からも価値の高い食品素材です。食品ロス削減や環境負荷軽減への寄与というプラスの側面は、今後ますます重視される社会的要請であり、乾燥野菜市場の成長を後押しする要因となり続けるでしょう。弊社の考察サスティナブルの点に関しては、弊社が当初から取り組んでいる規格外野菜のアップサイクルと関連しております。生鮮野菜や、日持ちがしにくい商品の流通は結果的にエンドユーザーが手に取る前や購入後に廃棄される、2次フードロスにつながることもあります。その点で乾燥野菜などの長期間日持ちできるものは、フードロスの削減に繋がっていると考えられます。ただ、規格外品であっても腐っていたりする場合は廃棄をせざるを得ないです。また、規格外野菜だけを生産者が選別するのは手間になることもあり、規格フリーで買い取るのが環境だけでなく、生産者の負荷削減につながると弊社では考えています。この点は、世間的に認識されている規格外野菜とは異なるかもしれません。最後に、今後もSDGsに関連した商品は増加すると思われますが、適正な価格で買取り、消費者にとっても満足できる商品を世に出すことが本来のサスティナブルであると考えているため、弊社では徹底して日々改善を通じて乾燥野菜に向き合ってまいります。業界への示唆と今後の展望乾燥野菜そのものは決して新しい商品ではありませんが、その持つ価値を再発見・再定義することで新たな顧客層を取り込めます。例えば、「野菜の栄養を丸ごと摂れるスナック」や「アウトドアや非常時に最適な野菜セット」など、ライフスタイル提案型の商品化も一案でしょう。実際に使い切り小分けパックや再封可能パッケージの人気が示すように、消費者目線の使いやすさを追求した商品開発は購買意欲を高めます。業界としては包装形態やサイズ展開の工夫、調理提案レシピの付与など、ユーザーエクスペリエンス向上に投資する価値があります。最後に、将来予測と課題への対応です。市場予測によれば今後も高成長が続く見込みですが、原材料の安定調達や品質保持技術の向上といった課題も並行して解決していく必要があります。気候変動による生産への影響や国際情勢による輸入原料価格の変動など、リスク要因も存在します。これらに対しては、産学官連携で新たな乾燥技術を研究したり、契約栽培で安定供給を図るなどの対策が考えられます。例えば高度なフリーズドライ技術やエネルギー効率の良い乾燥装置の開発は、品質向上とコスト削減の両面で効果が期待できます。また、国内自給率向上の観点から国産原料の活用促進も今後のテーマでしょう。乾燥野菜原料として多くを海外輸入に頼る品目(乾燥タマネギやニンニクなど)もありますが、国産志向の高まりを捉えて国内産地の育成や新規作物の乾燥食品化などに取り組むことも、差別化戦略として有効です。総じて、乾燥野菜市場は堅調な成長産業であり、日本の食と農業を支える重要な分野です。インスタント食品から家庭の食卓まで幅広く浸透しつつある乾燥野菜は、健康・利便・環境という現代のキーワードに合致した素材と言えます。業界全体で消費者ニーズとサステナビリティを両立させた価値提供を進めることで、さらなる市場拡大と持続可能な発展が期待できるでしょう。参考文献・情報源:Future Market Insight inc(2025/03/08)「Dehydrated Vegetable Market in Japan Insights 2023 to 2033」日本食糧新聞(2025/03/08)「乾物・海産物・豆類特集」日本食糧新聞(2025/03/08)「凍結乾燥食品特集2024」Fortune Business Insight(2025/03/08)「乾燥野菜の市場規模」Do well by doing good edited by Frau SDGs(2025/03/08)「食品ロスが招く気候危機を、「乾燥野菜」が救う!?【前編】」Agriture(2025/03/08)「乾燥野菜にはなぜブドウ糖が入っているのか?」Global Growth insights(2025/03/08)「乾燥野菜の市場規模」乾燥野菜のことはご相談くださいAgritureでは、規格外野菜をアップサイクルした乾燥野菜はもちろん、京野菜・他地域の伝統野菜をはじめとする持続可能な食材調達と食品ロス削減に向けて事業展開をしてまいります。乾燥野菜の導入を検討されている企業様は、ぜひ当社までお問い合わせください。OEM/卸販売についてプロジェクト一覧取り扱い乾燥野菜一覧