石川県で江戸時代から受け継がれてきた伝統野菜「加賀野菜」。その中でも、「加賀蓮根」は、特に歴史が古く、地元の方々に長年愛されてきた食材です。今回は、粘り強く栄養豊富な加賀蓮根の魅力について、詳しく見ていきたいと思います。加賀蓮根の特徴加賀蓮根の最大の特徴は「粘り」と「肉厚」です。一般的な蓮根よりも澱粉質が多く、太さがあり、ずっしりと重みを感じられるのが加賀蓮根の魅力です。節ごとに異なる食感が楽しめ、根元に近い部分はお餅のような食べごたえがあります。逆に先端部分はサクサクとしたシャキシャキ感があり、きんぴらなどにぴったりで、食べる場所によって全く違う味わいを楽しむことができます。料理に合わせて使い分け、異なる食感を楽しめるのも魅力です。加賀蓮根の歴史加賀蓮根の歴史は非常に古く、江戸時代にまでさかのぼります。当時の加賀藩では、蓮根が薬用としても重宝されていた歴史があります。加賀藩五代藩主である前田綱紀(まえだ つなのり)の頃には、城中で「ハスノ根」として上層の武士間で用いられていたと言われています。やがて、加賀蓮根は「大樋蓮根」として金沢市の大樋町一帯、特に小坂地区で栽培されるようになりました。この地区では、蓮根が「地ばす」と呼ばれる品種で、地下約1メートルほどの深さを匍匐(ほふく)するため、掘り起こすのには大変な労力が必要でした。それでも、加賀蓮根特有の粘りと食感が人々を魅了し、明治時代の中頃まで栽培が続けられていたそうです。明治20年代になると、さらに商品性が高まり、地域を代表する農産物として「小坂蓮根」として名を知られるようになりました。こうして、食用としての加賀蓮根の栽培が本格化し、現代でも金沢の特産物として多くの方に愛され続けています。参照:https://kanazawa-kagayasai.com/knowledge/lotus-root/おすすめの食べ方はす蒸し加賀れんこんを使った郷土料理として有名なのが「はす蒸し」です。すりおろした加賀れんこんに白身魚やエビなどを加えて混ぜ、蒸しあげるシンプルながら奥深い一品です。加賀れんこんはでんぷん質が多く、すりおろすと自然な粘りが出るため、つなぎを使わなくてもふんわりと仕上がります。さらに、最後にかけるとろみのあるあんが、加賀れんこん本来のもちもちとした食感を引き立てます。地域や家庭によっては、薬味としてわさびを添えたり、具材にうなぎや鶏肉を使ったアレンジも楽しまれています。和の食材を使うことで、より加賀れんこんの風味が引き立つため、家庭で手軽に楽しめる一品です。加賀蓮根のお好み焼き加賀れんこんを手軽にご家庭で楽しめるのが「加賀蓮根のお好み焼き」です。すりおろした加賀蓮根に、和風だしと塩を混ぜて、サラダ油を熱したフライパンで焼くだけで作ることができます。シンプルな材料で加賀蓮根の風味を楽しむことができ、おつまみにもぴったりです。もちっとした食感がくせになり、簡単に作れるので、忙しいときにも手軽にお試しください。お酒のお供にもよく合い、一度食べるとやみつきになる美味しさです。すり流し汁寒い季節におすすめなのが「すり流し汁」です。加賀れんこんをすりおろしてとろみをつけ、体が芯から温まる汁物に。見た目も優しい色合いで、加賀れんこんの自然な甘みがほっとする味わいです。とろりとした食感が体にしみわたり、金沢の郷土料理として親しまれています。他県ではなかなか味わえないかもしれませんが、加賀れんこんの魅力が詰まった一品です。加賀蓮根の乾燥野菜加賀蓮根は、乾燥させても美味しくいただけます。乾燥させることで保存がきき、さまざまな料理に幅広く活用できるのも魅力です。煮物や炒め物、スープの具材としても相性がよく、乾燥することで栄養が凝縮されるため、加賀蓮根の豊かな風味を長く楽しむことができます。忙しい時の味方として、ぜひご家庭でストックしてみてください。加賀野菜について